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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 23


時間にして十分。剣と銃のぶつかり合いは続いている。もう何合打ち合ったのかわからない。
真は白黒の斬撃の前に防戦一方。ワルドはクライドを何度も背後から襲ったがその度に浮遊する剣に阻まれている。
狭い廊下なので横は抜けられず、ワルドはクライドの前に出られない。状況は挟み撃ちなのだが裏を返せば戦力を二つに分断されてしまっている。
クライドに接近されて弾倉の再装填も呪文詠唱も封じられた真。主が封じられたため力が出せないワルド。戦況は悪い。
そんな中、真を後ろから見ることしかできないセドナは、自分の無力さを恨んでいた。
(私……また足を引っ張ってる)
森での戦いの時と同じ、庇われている。何もできない事がこれほどもどかしく辛かったことはない。
熱い想いが、どうしようもなく強い気持ちが溢れて、真を助けたいと叫ぶ。
胸がじくりと痛んだ。
(こんなにも好きなのに…こんなにも大切な人なのに…)
痛みが強くなっていく。けれど同時にそんな事は気にならないくらい喪失の恐怖を感じる。
(力が欲しい。私は真さんを助けたい!)
心の中で叫んで祈る。
その時、痛みが消えた。
かわりに大きな何かが奥底から湧き出して来た。
(これは…!)
活力が漲る。
セドナの身体は青い光を帯びて、神々しいまでの水気を纏った。
ただならぬ様子に剣戟が止まる。真もワルドもクライドさえも戦いを忘れてセドナを見た。
廊下中の水がセドナの手に集まって水球を形作る。
どれだけ水が増えても水球のサイズは変わらず、かわりに圧が増した。
「これなら…」
廊下中の水を集めた水球は凄まじい量の水を内包していた。
これをどうするか。
セドナは少しだけ考えて決めた。
「真さんごめんなさい。先に謝ります」
「はい?」
セドナの考えがわからず間抜けな声をあげる真。
だが真の理解を待たずにセドナは動いた。
水球の水を、自分の前方に開放する。
次の瞬間、水球は鉄砲水となって真達とクライドを襲った。
『どわぁぁぁっ!』
出鱈目な水流になすすべなく揉まれる。セドナ以外の二人と一匹はもの凄い勢いで玄関ホールまで押し流された。
「くぅ…まったく無茶をする」
最初に体勢を立て直したのはワルド。彼はまだ動けないクライドを尻目に真に駆け寄り、襟首を咥えて距離を取った。
「あの女…殺してやる!」
クライドは起き上がるとすぐにまた廊下に入ろうとするが
「っと…ここは通すわけにはいかないな」
ちょうど良い時に駆け付けた荒に進路を阻まれた。
「ナイスタイミング!」
「おうさ、嬢ちゃんはこっちに任せてお前さんはそっちを決めちまいな」
「応!!」
強くうなづき天虹を構える真
セドナに気を取られていたため一瞬防御が遅れるが数本の剣が主を守る為に集まり防御を固める
「邪魔だぁぁぁ!!」
天虹が光を放つ
瞬間、剣が氷つく
「いくらなんでも固まれば動かせねえだろ!?」
そう言うと銀閃を構える
「だが貴様の銃弾程度軌道を変えることくらい・・・」
そこでクライドの言葉が止まった
「さっきも言ったろ?『固まれば』変えられねぇって」
ニヤリと笑う真が構える銀閃の銃身からさらに『氷』の筒が真っ直ぐクライドに向けて延びている
「貴様ァァァァ!!」
「good-bye♪」
別れの言葉と共に銃声が響いた

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