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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 17

「ああ、でもそれもおかしいよな」
大学に保存されている魔術書は普通は閲覧すら禁忌だ。危険なものは特に。
そして盗むのも極めて困難。魔術書を大量に保管する場所は最低でも一級品の結界が張られていてさらに鬼児の見張りもいる。忍び込めばまず騒ぎになって、無くなったものに気付かないはずが無い。紛失なんてありえないのだ。
「ふむ…一夜明けて無くなっている事に気付いたのかもしれぬ。だとすれは痕跡を残さず騒ぎも起こさず忍びこめるような手練れがいるな。主よ、気を付けよ」
「わかってるさ」
真は表情を引き締めた。

朝。私は少し早めに目を覚ました。
幸せな夢を見ていた気がする。
(夢の中…真さんが微笑んでいて…私を抱き締めて…)
ベッドの向かい側にある化粧台に目をやると、だらしなくニヤけた私の顔。
ここ最近では最高の目覚めだった。
軽い足取りで部屋を出て、隣の扉を叩く。
「待て、今開ける」
中から聞こえたのはワルドさんの声。
「何か用か? 主はまだ眠っているのだが…」
「あ、じゃあいいです。私は朝食に誘いに来ただけですから、寝かせておいてあげて下さい」

昨日は資金と情報の調達をあまり休まないでやっていたみたいだからきっと疲れているんだと思う。
「うむ、ならば主が起きたら伝えておこう」
「それじゃ私はシャワーでも浴びて待ってます」
そう言った途端、私は起き抜けの格好のまま来てしまったことがとても恥ずかしくなった。
女の子には他人に見せたくない格好がある。起き抜けの格好はその代表。
特に真さんには見られたくないし、見せられない。
うん、決めた。真さんが起きて来るまでに身支度を完璧にしよう。
(そうしましょう!)
私は早速部屋に戻ってバスルームに入った。
熱くも冷たくもない温水をかぶる。
身綺麗にした私を見て真さんはどう思うだろう?
そう考えながら見たのは腕の傷跡。真さんに血を与えた時の傷。
そこに微かな繋がりを感じて、嬉しくてこそばゆい気持ちが込み上げる。
初めて知った熱い想い。これはきっと……。
「くぅ……っ」
胸の上、鎖骨の間あたりが突然痛む。まるで熱いなにかが伝播したみたいに激しい痛み。
けれどそれは一瞬で、嘘のように引いて消えた。
「気のせい…? そろそろ出なきゃ…」
身体を拭いて髪を乾かす。
それから服を着て髪を梳していると、部屋の扉が叩かれた。
朝食後、真達はそれぞれ行動を開始した。
荒は口座への入金を確認しに出掛け、真はセドナに付き合ってもらって買い物に出た。
真に誘われたセドナはすこぶる機嫌が良くてちょっとしたデートになった。
二人は街をまわりながら、列車での騒ぎで無くしたものや消費したものを購入する。
そして真は弾薬を補充した際、ついでに新しい銃を購入した。大口径のゴツい銃だ。
「大きな銃ですねぇ」
「ああ、今ある銃じゃ破壊力に欠けるからね。でも威力があっても普通の銃じゃ心許無い。呪文を刻んでなんらかの魔術を掛けられるようにしないと…」
真はそのために彫金道具を購入していた。

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