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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 16

女中さん達の動きにも琴乃と同じく全く隙が無い。きっと彼女達もエージェントだろう。恐ろしい店だ。
料理の後に鞄と書類が持ち込まれた。
「こちらが活動資金の五万ドルでございます。あとの四十五万は…」
「あ、そっちは荒の資料を見てから決めるよ」
「はい。ではこちらが荒という男の情報です」
琴乃はテキパキとして書類を差し出してきた。
ワルドと一緒にそれを見る。
「ふむ…素姓は不明。だがこれまでの大まかな経歴はたくさんあるな」
「だな。見たところ金さえ積んどけば信用できるみたいだ」
荒のやってきた仕事は様々だったが、依頼主を裏切ったケースは無かった。
「いかが致しましょう?」
「決定権は主にある。決めよ」
「わかったよ。けどさシリアスなこと言いながら飯食うのはやめてくれ」
セリフとは裏腹に、ワルドは既に料理に手を付けてご機嫌に尻尾を振っていた。食い方も子供のように汚い。
「決めた。荒は引き続き雇う」
「わかりました。では荒氏の口座に残りの四十五万を振り込ませます」
「お願いします」
「それから荒氏のこと以外にも気になる情報が入っております」
食べながらで構いませんから聞いて下さい、と琴乃は言ってもう一つあった書類を読み上げ始めた。
「まず人魚の集落ですが、かなり危険な状態にあるようです。まだ完全に制圧されてはい内容ですが保って一週間がいいところでしょう」
久しぶりの和食に舌鼓を打ちながら真は情報を分析する。
保って一週間、ということは明日にも制圧されてもおかしくないだろう。
だが焦って準備を怠るのは良くない。明日一日を準備にあてて明後日に出発しよう。
「またこの国の邪神崇拝者達に大規模な動きが見られます。それと同時期に気になる事が…」
「気になる事?」
「はい。アメリカのマサチューセッツ州アーカムにあるミスカトニック大学から魔術書が紛失しているのです」
「魔術書が?」
「はい、詳しいことはまだ調査中ですがいくつかの魔術書が奪われたようです」
魔術書にもピンキリがあるがわざわざ奪い取ったということはかなり高度な魔術書に違いはない
「わかりました。気をつけてことにあたります」
「はい、詳しいことが分かり次第報告致しますので日本にお着きになりましたら御連絡ください」
そう言うと琴乃は報告書と資金を置き部屋を後にした
「魔術書・・・か」
誰に言うともなく呟く
「あ!!ワルドお前!!それ俺の」
「ボサッとしているほうが悪い」
今ここに主従関係の垣根を越えたバトルが開始された

食事を終えて、真とワルドは料亭を出た。驚いた事に琴乃はあの店の女将で、従業員総出で見送られてしまった。
ホテルに歩きながら先ほど得た情報を吟味する。
「なぁワルド。なんかおかしくねぇか?」
「おかしいとは?」
「魔術書のこと、あの時琴乃さんは紛失っていったろ。あとで奪われたって言い直したのは多分彼女の主観だからいいとして、報告書にはあくまで紛失って書いてあったって事だ」
「ふむ…」
「でもおかしいだろ。奪われたなら紛失じゃなくて盗難だ」
「つまり主は大学でもなぜ魔術書が無くなったのかわかっていない、と言いたいのだな?」

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