PiPi's World 投稿小説

Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 12
 14
の最後へ

Beast Master“真” 14

「すごいな」
「驚きですねぇ」
「ふむ、良い拾い物だったようだな」
後方で見守っていた二人と一匹はそれぞれ感想を漏らした。
「お褒めの言葉はありがたく受け取っとくぜ」
荒は戦闘なんて無かったかのように平然とタバコの煙を吐いた。
「ところで、荒は魔術師か?」
「…ほう、今の戦闘だけで気付いたのか。大抵の奴は俺を無理して魔術を使う闘士だと思うんだが」
真の鋭い指摘に荒は感心した。
「なんていうか術の構築に無理が無かった。適性が無いのに魔術使う奴はどっか変なんだよな」
優れた洞察と推理だった。ワルドはたまに見られる主の資質の高さに惚れ惚れする。
主の魔術師を喰ってしまうほど強力な魔獣であるワルドが真のような新米に従っているのは、ひとえに真の資質の高さに惚れ込んだためだと言えよう。
「へぇ、なかなか頭良いんだな」
「普段はそうは見えないですけど」
「セドナちゃんなにげに非道いよ」
仲直りして余裕が出てきたのかセドナの歯に衣着せぬ遠慮のなさが戻っていた。
「でもさ、よく段平なんて使えるよな。それって魔術師には向いてないだろ?」
「その種はこれさ」
荒は段平を差し出して柄の部分を見せてくる。
そこには梵字が彫ってあって、真の銃と同じで魔力を流し込むと魔術が発動するようになっていた。
「ま、大抵どんな奴でも殺せば死ぬし、あんま魔術にゃ頼っちゃいねぇんだが」
段平を服の中に入れる
「でも強いよ」
「お前も場数踏みゃぁこんくらいは出来るようになるって」
煙草を取り出すと同時に先が軽く爆ぜ火がついた
「ま、手っ取り早く強くなる方法なんてねぇからな。たまに『魔術書』手にして強くなったって勘違いした奴と戦ったが、まぁ酷いもんだったな」
ふ〜っと煙を吹く
「最期は魔術書に食われちまってた。『エイボンの書』、『ルルイエ異本』、『エミグレ文書』力のある魔術書は数あれど、まともに使えた奴はほとんどいねぇや、お前も強くなりたいからといって簡単に魔術書に頼るなよ?」
「わかってるさ。魔術師は知恵と知識と創意工夫。師匠によく言われたよ」

その後は人外にも鬼児にも邪魔されることなく、道程はスムーズに進んだ。森で一晩夜を明かし、次の日の昼ごろには街に到着した。
なかなか大きな港街だった。
三人と一匹はまずホテルにチェックインした。表通りの大きなホテルだ。
場末の宿よりもこういうところの方が、社会から隠れなければならない人外には手が出しにくい。真たち混血の鬼児の間では常識だ。
金の事はしょうがない。真はもう日本に着いたであろう仲間から、荒の情報を調達するついでに貰うことにした。
英語を喋れるセドナを部屋に呼んで、手伝って貰いながら国際電話を掛ける。
相手は仲間の一人。世界でも有数の巨大企業の代表をしているという、とんでもない天才女子高生だ。
「なにか……用?」
電話に出た彼女は真のよく知る半分眠っているような少女の声だった。
余談だが彼女こそ真をこのイギリスに置き去りにした張本人だ。
「日本に戻る件で頼みがあるんだけど…」
真はこれまでの近況を伝えた。
「わかったわ…荒という男とあと役に立ちそうな情報を集めさせるから…二時間ほど待って。それから資金は五十万ドルくらい用意する…」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す