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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 12

「出血って…セドナちゃん怪我したのか!?」
「馬鹿者、誰のおかげで銃で撃たれた傷が治ったと思ってる」
「あ、そういえば…」
服を捲り上げると人形に撃たれた傷は塞がっていた。肌には痕が生々しく残っていたが痛みは無い。
「傷が治ってる!」
「遅い!」
「普通気付くだろ…」
荒は一瞬、真への認識を改めようかどうか本気で考えた。
「セドナが主に血を与えたのだ。人魚の血には治癒能力があるからな」
人魚の最大の特徴、それは類い稀なる生命力だ。
八百比丘尼伝説では人魚の肉を食べた娘は八百年も生きたという。血が銃創をたちまち塞いでしまっても不思議じゃない。
「そっか、結局助けられたのはおれの方か…」
自分のために血を与えてくれたセドナを想って、真の胸が熱くなる。
そうこうしてるうちに河からセドナが戻って来た。
そして目を覚ました真を見た彼女が真っ先に実行した行動は、痛快な平手だった。

全員揃って三人と一匹になったおれ達は列車で向かう筈だった街を目指して森を歩き始めた。
痛む頬を擦りながら、ワルドに乗って前を行くセドナちゃんを見る。さっきからずっと不機嫌でおれの方を見ようともしない。
強烈な平手をおれにカマしてからセドナちゃんは物凄い剣幕で怒った。原因は言うまでもなくおれだ。
追い詰められていたとはいえ自殺行為に走ったおれに、もっと自分を大切にしろと怒った。それからとても心配した、助かって良かったと言って泣かれた。
目の前で女の子に泣かれて、おれは戸惑うことしかできなかった。
んで、やっと落ち着いたと思ったら照れ隠しにもう一発。その後、荒を相談無く勝手に雇ったことに怒ってさらに一発、しかもグー。
それからセドナちゃんはずっと口を利いてくれない。
おれもかなり血を流して消耗してるからワルドに乗りたいんだけど、一緒に乗るなんて無理だろうなぁ。
「はぁ…」
溜め息を吐く。
隣りで荒が笑いを噛み殺してるのがすげームカつく。
「なんだよ?」
「気になるならとっとと謝って仲直りしたらどうだ?」
「なんで? 殴ったのはあっちだぜ」
「それは一言も相談しないお前が悪い。黙って決められたのが気に入らないなんて、なかなか可愛いじゃねーか。それって構って欲しかったってことだろ?」
えっ…?

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