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【旅】
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【旅】 3

<息子よ、この国はきっと豊かな国になります。だから約束して下さい。国が良くなったら、馬鹿な旅なんて止めて私の元へ、この家へ帰っていらっしゃい。お金はその時に返してもらいます。>
…まあ、母親なりの最後の引き留め方だったのかもしれないね。少し帰ろうとも考えたけど、それでも僕の気持ちは変わらなかった。むしろ堅くなっていた。そのお金で旅に必要なものは一通りそろえられたし、郷土料理も満喫できた。僕はもうその時、僕なりに分かっていたんだ。…もうこの国には戻ってこられなくなるんだなってさ。
そうだ僕ばかり話していてもつまらないだろ?君の“国”についても話をしてもらえないかな?」
青年はニコッと笑ってみた、勿論相手の男の子には見えていない。

「僕の国?」
「そう君の国」
「僕が物心ついた時には親はいなくて、変わりにお姉ちゃんがいろいろ世話をしてくれたんだ。優しいお姉ちゃんなんだ。でもお姉ちゃんは隣りの部屋から僕を出してはくれなかったんだ。一度だけこっそり抜け出そうとした事があったけど、とても怒られたよ…。だから僕は外を全然知らないんだ。
  今日はとても嬉しいよ。昔から隣りの部屋がどんな所か気になってたんだ。ありがとうお兄ちゃん。」
「どういたしまして」
青年は頭をかきながら少し照れた。
「外には出た事ないけど国の事ならなんとなく知ってるよ、この国はとても近代的で鉄の乗り物が走り回ってて、皆笑顔なんだ、でも自然が少ないのが欠点なんだって」
「………」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「君はもう自由だ、外に出てもいいんだ。どうだい?旅にでないかい?」
「旅に?うん、行く!あ…」
男の子は喜んですぐに残念そうな顔で俯いた。

「でもお姉ちゃんが…」
「…お姉ちゃんは大丈夫だよ、きっと許してくれる」

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