【旅】 6
「どうじゃった?」
お爺さんの問いに青年は俯いて何も答えない。
「そうだったか…、まあ命があっただけ運がいい。あそこには化け物になった“被験者”がゾロゾロおるでのぉ」
「子供には会いました」
「!!、何もしておらんだろうな」
「はい」
「ウイルスに犯されたものは一生その年齢で生きていく…、気の毒だが彼等もまた化け物になるのだろう」
「それでは僕は先を急ぎますので、失礼します」
「ああ、久しぶりに人と話せて嬉しかったよ。気を付けて、さようなら」
「さようなら」
青年は再びヴァイクを走らせる。
「母さん一応帰ってきたから…」
青年は故郷だった場所に背を向けて、ヴァイクを前へ前へと走らせて行った。
THE END