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光闇予言書
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光闇予言書 10

「はン」
オルゴンは笑った。この場合に、くそ真面目で感動屋の相手が可笑しくなったらしい。
と、その顔がふっと真剣になって、
「来い!」
ぐいとミルボロの手を引っ張った。
ミルボロの身体は、オルゴンに振りまわされる形で半円を描いた。同時に、ミルボロがさっきまでいた場所に、ドスッと凄まじい音がたつ。長大な針ににた何かが、そこの地面に突き立ったのだ。
透き通った、円錐型の…氷柱だ。どうして、こんなものが?
ミルボロの思考はしかし、オルゴンの叫びに中断された。
「ウェリアル!来てくれ、助けてくれ!」
なかなかキマッた台詞のあとで、これだ。普通なら噴き出しそうなところだが、このときミルボロは、むしろ「ウェリアル」という名のほうに注意をひかれている。
…どこかで、聞いたような名だが。
思い出すまえに、目前に何かがふわりと落ちてきた。日を反射しなければ、気付かなかったろう、それは細く長い、そして透明に近い色をした一本の髪だ。むろん、オルゴンやミルボロのものではない。
クスラルが、さっきから四方に投げやっていた髪だ。
そこまで考えたとき、その髪から刺すような冷気が広がって、彼の顔面を襲った。
「……!」
のけぞったのは、起こることを予測したゆえではなく、ただ本能に従ったのである。それが、正解ならずとも幸運には繋がった。
クスラルの髪は、一度ユラリとゆらめくなり、まとった寒気そのものとして凝結した。――氷柱!
髪が、氷柱と化した!それもただ一本の氷柱ではなく、五、六本、重なり、組合わさっている。
その氷柱の尖端が、電撃さながらに伸びて、ミルボロに迫る。ただ本能だけでは、とても躱しえる速さではない。が、氷柱が剣尖のごとくミルボロの胸を貫きかけた時。
ギィン!
横合いからの一剣が遮った。
「こっちだ!」
と、剣の主が喚いて、またもミルボロの身体をぶん回した。…もちろん、オルゴンである。
彼は剣を振り回しつつ、
「よしよし、その調子。あまり力みすぎて身体が硬くなってねぇのがいい。振り回しやすいからな」
そんなことをいって、笑った。
ミルボロとしては褒められているやらけなされているやら、判断のつかぬまま苦笑するしかない。
その身体を半ば抱え込むように引きずって、オルゴンは今度は前へ跳ぶ。繰り出した剣尖でカツッと弾いたのは、髪から発生してまだ指くらいの太さ長さの氷片だ。
なるほど、髪は目では捕えがたいし、かといってすっかり氷柱となってしまってからでは破壊するのに骨がおれ、それだけ剣も人も疲労する――が、ちょうど今オルゴンが撥ねとばしたくらいの大きさの氷片ならば、万事都合がよい。
問題は、氷片のこの状態がただ一瞬ということで…
「オオッ!」
一喝したオルゴンはだが、またしても同じタイミングで氷片を払い、しかもその後の空間――障害物のなくなったもっとも安全な空間にミルボロを引きずって飛び込んだ。否、彼はむしろ、払いよい大きさの氷片目掛けて突っ込んでいっている。

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