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光闇予言書
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光闇予言書 15

 ミルボロはいうに及ばず、クスラルまでが目を点にして見ている前で、二人はたっぷり十秒はそのままでいた。
「……オ、オルゴンさま……さようなことは、時と場合を、か……考えて」
「ものっっっ凄く癪だが、でくのぼうのぬかすとおりだ」
 ミルボロに続けてクスラルもいった。
「いっそ、そのまま両人もろとも首を奪ってやろうか?」
 美しい唇から残酷な言葉を吐いて、にやりとした。
「……ウェリアル。九選士のうちでグリーフともども、我らにも素性が知れなんだが、まさかここで会おうとは! 嬉しいぞ――」
「あああ〜っ!!」
 ミルボロが悲鳴にちかい声を発した。何がおこったかというと……何も、おこってはいない。
 ただ、
「そうだ、そうであった! ウェリアル、とはどこかで聞いた名だとは思っていたが……」
 ようやく、彼はそれを思い出したのであった。
「……おのれの味方の名さえ失念するとは、呆れた間抜けだな」
 クスラルは冷笑したが、ミルボロがそれへ言い返すまえに、
「ちょいと!」
 ウェリアルがやっとオルゴンと唇をはなして、一喝した。
「あたしの名を、軽々しく呼ばないどくれ」
 一息おいて、言い直す。
「いいや、許さないよ。この人以外が、あたしを名前で呼ぶのはね」
 そこで、また盛大にぶっちゅ〜とやらかした。
 ……どうやらウェリアルが人ならぬ存在であるらしいのは、もうさすがにミルボロにもわかっている。だから、人目をはばからぬ愛情表現も、あるいはそのためかと思われたが――
 それに応えるオルゴンという存在も、あるわけで。
 そちらは、正真正銘、人間であるだけに、その正気を疑わざるをえない。
「オルゴン――さま……」
 意味もなく、ミルボロはうめいた。
 オルゴンの耳に、その声は入ったとも思われぬ。ウェリアルの唇とおのれの唇が離れると、さきほどとはうってかわって神妙な面持ちとなって、ミルボロには見向きもせず、呟いた。
「シムリュイの深き森を統べるエルフの加護を我が手に――春の息吹、生命の力を司る女皇子(ひめみこ)ウェリアルの宝剣よ、顕れ出でよ」
「我が加護を、オルゴンに」
 ウェリアルが、こちらも神妙な口調となって応じた。とたんに、空となっていたオルゴンの掌に、深緑色の光が灯った。それは見る間に眩さを増して新芽の黄緑から陽光の黄金となる。


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