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光闇予言書
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光闇予言書 11

突っ込むタイミングを見計る眼力、そして実際に突っ込む瞬発力、さらにミルボロを引きずってゆく腕力。さらに突っ込むと同時に、剣尖で氷片をはじく確実さ…どれをとっても、オルゴンは凡百の剣士ではない。
引きずられ、振り回されつつミルボロはそんなことを考え、覚えず顔に血をのぼせた。…ミルボロに「そっちの気」があるわけではない、これは正真正銘の男惚れというやつ。
が、せっかく?ミルボロがそんな心になっているのも知らず、オルゴンは叫ぶ。
「このくそ餓鬼め、次から次へと髪を投げやがって!禿げちまえ、畜生め!」
誰にむかっての叫びかといえば、もちろん?クスラルである。まったく、この恐るべき相手に「くそ餓鬼」だの「禿げちまえ」だの「畜生」だのと喚き放題に喚き散らせるとは、オルゴンは胆力もまた並ではないというべきだが…
今度は、ミルボロはうっとり男惚れとはいかなかった。
「オ、オルゴンさま…な、なんというお言葉をっ」
「うるせえ!いま知ったことじゃああるめえ、何を騒ぎたててやがる」
舌打ちして、オルゴンが返した。
「…黙って引きずられてやがれってんだ、このデクノボウ」
「ひっ、酷いことを」
「酷い?酷いってえのは、そりゃ嘘八百の罵詈雑言あびせられたってんならいえるけどよ、俺のいうのはただ、事実の指摘ってやつじゃあねえか」
「いくらなんでも、そのお言葉には異議が、あ、あ、あ〜れ〜!」
ミルボロの悲鳴は、ここでまた激しく身体をブンまわされたからで。だが、ブンまわしつつ、オルゴンは早口に囁いた。
「なんでもいい、その調子で喚いてやがれ。さもなきゃおまえは正真正銘のデクノボーだぞ…喚いて、あのクソガキの注意をこっちにひきつけてろ」
 もっとも、それはミルボロの耳に届いたかどうか。いや、届かない距離ではないが、ミルボロは、
「◎⇔▲〒↓♪&〜!!」
 と、こんな状態であるから、言語中枢がまともに機能しているとは思われない。
「まあ、それでもいいや」
 オルゴンはだがいい加減な反応をして、
「しかしおまえ、本当うるせえな」
 矛盾する雑言を吐いた。
「●☆□〜!」
「…あれ、ひょっとして、本気でヤバイのか?」
 首を傾げたのは、罵言にはある意味鋭く反応していたミルボロが、人間ばなれした喚きをあげるばかりなのを、さすがに気にしたか。
 とはいえ、
「けどよ、俺は俺で手一杯なんだよな。しばらく、我慢してくれや」
 いうことは、えらく冷たいが。
 冷たいといえば、周囲の気温もひどく下がってきたようだ。防戦に必死で動きまわっているオルゴンの身体と、それより鼻口から、しろくたちのぼるものが見えだした。
 クスラルは依然、うすら笑いの顔で髪を投げつづける。
「やるではないか、もと王子殿下」

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