PiPi's World 投稿小説

光闇予言書
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 1
 3
の最後へ

光闇予言書 3



「…うげ、こっちにもいやがる」
 城下──灰色っぽい銀髪をした少年は、物陰から先を見やって、うんざりしたみたいに呟いた。王宮に落書きが見付かった昨日から、その中に名前があるというので、少年を探すのに普段の数倍からの護民兵が街をうろうろしている。
 それを知っのは、一度はまともに「クレオという銀髪のガキを知らんか?」と尋ねられたからで、それは危うく「知らねえ」とはぐらかして逃れたが、長く続く誤魔化しでもないだろう。
「…何の魂胆か分からねえのに、簡単に捕まれるかってんだ。が、こりゃ、逃げるしかねえかもな…」
 十二のときに飲んだくれの母親をなくしてから、しがらみのない身である。早々に…その日の夕に、とある商店が別の街に送る積荷のひとつと自分自身をスリかえて、まんまと王都をおさらばした。
 と、いうわけで、
「一足、遅かった!」
 翌朝、カルガダとミルボロは顔つきあわせてうめいた。クレオの行方がいまひとつ分からぬ、との護民兵からの報告を受けてカルガダが占ったところ、やはり彼が王都を抜けていたことが知れたのである。
「…では、しかたあるまい…」

 と、今のところただ二人集っている九選士は、昨日の会議を踏まえつつ、結局ミルボロはオルゴンを迎えてから一直線にカトンナ山へ、カルガダは他の九選士を探しつつ、出来る限り早くそれに合流すべしということになった。何しろ、味方にも名しか知れぬ残りの連中に比べ、近衛隊の長と反逆した王族の忘れがたみ、名から顔が付き合わせやすい上、予言書争奪のゲームに真っ向飛込む形の行動をとるのだから。
 ──そう、これは確かに一種のゲームかもしれなかった。九対九、いずれが勝つか?

   †

 イリアス国北部。この村の名はシムリュイ──十五年前に元国王ホムカルアの弟シルヴァリが、己が正妃の子、兄が妾腹であるのを口実に譲位を求めて挙兵し、破れた…その遺児及び死刑を免れた家臣らが流されている。もとより、政治的な地位は奪い去られているが、中流貴族並の暮らしはできるように配慮はされている。
 シムリュイは田舎ながら風光明美、ただし貴族らのリゾート地にはなっていない。その理由は…おいおい、明らかになることだろう。
 で、その美しい辺境にあるシムリュイに、珍しくも身分の高そうな騎士の一団がやってきたから、村人はき驚愕した。
 ──やって来たのはミルボロで、もちろん、位の高い騎士だから一人ではないが、几帳面で知られる彼らしくかなり急いだらしい。事情を理解の上集まった人数はやっと五人であった。
「おい、おばちゃん」
 と、その一人が道端の農婦に呼び掛けた。
「へえ…?」
 と、半分ぽかんとしたまま、農婦は返して、それからハッとこの騎士たちが王都から来たらしいことに気付いて、
「あの、もしかして、…オルゴンさまらの…?」
「そうだ」
 脇からミルボロが答えると、農婦は案ずるような顔で、
「あのう、何か、別のお沙汰でもございましたのでしょうか?」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す