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光闇予言書
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光闇予言書 2

「たしかに、まことなれば…陛下が手にされるや否やは別として、他国に渡れば恐ろしき事態となりかねませんな…支配する側があるということは、支配される側もあって当然、後者となるは望ましくありませんのう」
 ホムカルアは、頷いた。
「それよ。まさに、余が恐れるのも。ことに闇王国ヘアン…!あの国はもともと強大な上、王も天下に野望を向けている。あの国に手にされては…」
 その時、
「ちと、失礼」
 カルガダが、目を閉じて、何かを聞き取ろうと集中する素振りをみせた。…しばらくたって、
「陛下」
 そう呼び掛け、目を開けた彼の顔は、青ざめていた…
「実は貧道(己の遜称)も、それと同じことを考え、…また、この王宮と同じ現象が他国の王宮でも起こってはおるまいかという懸念をいたしまして、配下を主だった外国に飛ばせ、探らせましたところ…」
「おう、さすがは老師」
「ウクナ国、異常なし。サガロイ国、異常なし。ただ…」
 ホムカルアの顔に、緊張がはしった。
「ただ、ヘアン王国王宮に、同じく光闇予言書のこと、また九選士のことが記された、と…そしてまた、ヘアン国王シャドクロウはすでに記された名の者たち…九選士を出発させた様子、と…」
「な、…なっ、」
 ホムカルアは、すぐには口すら利けなかった。
 が、ちょうど側に置いていた杯から一口酒をあおるとやや落ち着いて、
「老師、それはどういうことだ?」
「とは?」
「スグレンティセメイヤの名が記されていたのだ、またシャドクロウはもともと天下を欲していた、心動かされたのは分からぬではない。しかし、九選士とは、…そう、簡単に見付かるものなのか?こちらの九選士は、名を知っておるのさえ、老師と、ミルボロ、オルゴンの三人…」
「あちら方の九選士は」
 と、カルガダは重く息を吐いて、
「皆が皆、ヘアン国王直属の精鋭部隊の頭であったようで」
「なんと…」
 ホムカルアは、またかたまった。
 カルガダは続ける。
「が…こちらの九選士、貧道は御覧のとおりの老いぼれ魔法者、ミルボロは真面目ばかりが取り柄である上…オルゴンは、王族から退けられたのは親の罪であやつ自身の罪ではないとしても、聞けば流された先で女遊びばかり、ついでに振られてばかりという態」
「……」
「また、貧道はグリーフ、クレオなる者についても些か存じておりますが」
 ホムカルアの顔に、希望が浮かぶ。
「…グリーフはエルフでございまして、外見は…エルフといえど稀なる美しさながら、弱視の乱視、さらに趣味は美食飽食、また飽飲…その他には寝てばかりで、その点でも実に稀なる者…」
 ホムカルアの口はあんぐりと開いたままだが、カルガダは容赦ない。いや、事実である上は仕方がないのだろうが。
「クレオは王都の市井の輩、何故貧道が存じておりますかと申せば、きゃつの職というのが、元手のいらぬ──有り体に申し上げてしまえばスリでして、この間どうしても捕まらぬと街の者が嘆いておりましたでな」
「…もういい」
 ホムカルアはげんなりと呟いたが、意外に立ち直りは早かった。…この場合、本当に椅子を蹴たてて立ち上がったのだ。
「ともあれ、光闇予言書がヘアン王国に渡るのは見過ごせん!…小姓!いるか?ミルボロと、宰相を呼べ。機密作戦会議だ!」

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