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光闇予言書
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光闇予言書 13

「汚いやつとは、そこのそいつだろう」
 吐き捨てるように、クスラル。オルゴンの罵詈雑言を徹頭徹尾つめたく無視しているように見せて、存外しっかり聞いて、気にしていたことが明らかになってしまったが、オルゴンはそこには突っ込まなかった。
「うーむ、たしかにな。それだけは、てめえに賛成してやらぁ」
 逆に大肯定の台詞をはいてうなづいて、
「……へえ、ってこたあ、俺とてめえと、初めて気が合ったってわけだな」
 この場合に、にやりとしてみせた。
 ――この場合に。
 オルゴンが壁に剣を奪われて以来、クスラルは髪を投げる手を止めている。が、これが手心ではなく、獲物を追いつめたと見てただ焦らぬ心になっているのだというのは明白で、絶対に見逃すつもりがないのは、氷の冷気と同化して辺りをそくそくと包む殺気が健在であることからもわかる。
 しかも、オルゴンに――ついでにミルボロにも――、もはや、武器はなかった。
「おい」
 と、この期におよんでまだ笑いを消さずに、オルゴンはいう。
「てめぇが俺を殺そうって気になっているのはわかった。けどな、どうも――釈然としねぇんだよな。ま、人間いつかは死ぬと決まってるのに、いざ死ぬとなると理由を知りてぇ…なんざ、けったいな話だと思うけどよ。それでも、ただ死ぬ、ってのと、殺される、ってのでは、けっこう……当事者にゃ違うんじゃねえかと思うわけだ」
「……で?」
「はやい話、殺される理由ぐらいは話してくんな、ってことだ。こっちにゃさっぱりわからねぇ」
「話す理由は、こちらにはない」
 冷然としてクスラルは一度は突っぱねたが、気が変わったか、
「しかし、本当に知らぬとならば、こちらもつまらぬな」
「は?」
「闇の九選士は、光の九選士を殺す。――ふふ、九人同士だが、しかしはたして同等かな?」
「……はあ??」
 オルゴンにはいよいよわけがわからぬが、復活したミルボロには聞きずてならぬ話だ。
「な……なにを申すか、ヘアンの小僧め。それほどたやすくはゆかせぬ、光の九選士は闇の九選士に負けぬ!」
 必死でわめいた。それでクスラルは、ほう、という具合に唇をすぼめて、
「そっちのデクノボウは事情を知っておるようではないか。殿下、そういうことだ――訊きたいことがあるのなら、死んでからデクノボウに訊くがいい」
「な……なにを!」
 オルゴンより、ミルボロが慌てて叫んだ。殺す、と断言されたに等しいから、慌てるのも道理と思われたが――
「デクノボウ、デクノボウと、何度いう気だ。そちらとてヘアンの廷臣にちがいあるまいに、何たる礼のなさ……他国の、しかも初対面の重臣を嘲罵するとは……」

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