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魔術狩りを始めよう
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魔術狩りを始めよう 7

 なぜか敵には『ツクヨミ』の効果が薄く、若月がどの辺りにいるか分かるらしい。
 もっとも、細かい位置は分からないようなので何とか無傷で走り続けているのだが、悲しいかな現代っ子。さすがに体力的につらくなり、足の動きも少しずつ乱れが見え始めてきた。
 このままでは確実に殺される。運良く捕獲で済んだとしても、そうなったらあの少女にナニをされるか分かったものではない。
 中々いい感じな顔だったから、されるよりはむしろ色々したいなぁ、などと場違いなことを考えながら、それでも背後の脅威から必死に逃げ続ける。
「(ヤバい!ヤバい!!)」
そう思った時だった。不意に獣の動きが止まり若月がいる方とは違う方向を向いた
「(あれは…)」
若月もその方向を見るとそこにはボロボロの着物を着た男がコンビニ袋片手に頭を掻いていた
「…文明化の時代だというのに珍しい生き物もいたもんだ」
そう言い男は黒い獣を見ながらまるで臆することなく近くのベンチに腰掛けた
すると獣は場所のハッキリしない若月よりもと考えたのか男に向かい牙をむいた
「あ〜、大変だ、あんなのに噛まれたら死んじゃうな」
まるで人事のようにそうつぶやくと懐から飴を取り出し口にいれた
 それを見た獣は何を感じたのか、突然唸り声を上げ始める。足を曲げて発条(ばね)の力を溜め、警戒の姿勢を崩さない。
 その時、突如若月の背筋を冷たいものが駆け抜けた。
(今の感覚は……まさか、『歪み』?! この人が?)
 若月の心中を余所に、男は視線だけを獣に向けると、
「面倒なんだよな、こういうコト。さっさとどっか行ってくれないかな〜」
 などと言いながら、しっしっと手を振る。
だが獣が引く気配は全くなくむしろ殺気が増したような感じがする
「…はぁ、面倒くさいなぁ〜」
そう言うと下駄を履き直し構えた
「ガルルル!!」
牙をむき唸る獣にむかい男が右手に持っていたコンビニ袋を放り投げた
するとコンビニ袋が溶け獣の顔に張り付いた
「はい、終わり」
コンビニ袋を剥がそうとしていた獣の尻尾をつかんだ男がつぶやいた
「なんだ、生き物じゃないのか」
その瞬間獣が一瞬震えたかと思うとボロボロと崩れた
「くぁ〜…眠……」
男は大きくあくびをしベンチに寝転がった

(な、何だ? あの獣を一瞬で倒すなんて、どんな能力なんだ……)
こっそりと電柱の影から(そんな事をしなくても姿は見えていないのだが)見ていた若月は、その光景に唖然とする。
その時、完全に崩れた獣の残骸の中から、何かがどさりと音を立てて倒れた。男はすっかり寝入ってしまい、目を覚ます気配はない。
(あれって――フツノじゃないか! 何であんなところに?)

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