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魔術狩りを始めよう
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魔術狩りを始めよう 1

 深夜、無人の裏通りに奇妙な一組の男女がいた。二人ともまだ二十歳前後、男の方は高校生ぐらいかもしれない。しかし、夜遊びをしているような雰囲気ではない。
 女の方は、化粧っけの無い、それでいて整った顔立ちに、闇に溶けるような漆黒の髪を無造作に束ねている。そのせいで、少女のようにも成人女性にも見える。
 その年齢不詳の女は何かを探すように、鋭く感情の見えない無機質な瞳を周囲に巡らせていた。その首の動きにあわせて束ねられた髪が揺れる。
「先輩、先輩。オレは今ヒジョーに眠いのですが」
 男の方は乗り気でないらしい。如何にもといった感じで大欠伸をしてみせる。
「大丈夫、明日は昼からしか授業入ってない」
「…オレはフツーに朝からなんですけど」
「今宵の月は見事だな」
「どう見ても新月ですが」
 さらりと無視された。現在午前二時=丑三つ時。良い子は当然夢の中で安寧に浸っている時間である。しかし同時に、正反対の『モノ』が最も盛んに活動する時間でもあるのだ。
「ほら!男なんだから、いつまでもナヨナヨ言ってないで!回りを警戒してなさい…」先輩と呼ばれた少女は凛としており、ビシッと言い放った…「別にナヨナヨはしてないんスけどね…」「まだ何か?!」「い、いえ!何でもありますん!」そんなやりとりをしている間に二人の回りでは…ガサガサッという人か獣かが移動しているような音が暗黒に響いていた…
「……おい、若月」
「はいはい? いったい何すか?」
 めんどくさそうに返事をする若月には目もくれず、少女はさらに鋭利な目付きで周囲を見回す。それを見て、状況を理解した若月の表情もわずかに険を含む。
「……イケる?」
「オレはいつでも行けますけど、フツノはどうするんすか?」
「念のため、第一で解放認証」
「第一!? 先輩、それはちょっとびびり過ぎなんじゃ……?」
 若月の言葉に、少女は凄惨な笑みを浮かべながら答えた。
「ビビる? この私がか? 貴様は世界中の魔術師に笑われたいらしいな」
「だけど…一般人まで巻き込んじゃったら、大変なことになりますよ?」「ふん…その忠告はありがたいが…私がそんなヘマをすると思うのか?私は数メートル先から真後ろの存在をも確認する」「確かに先輩の空間把握能力は凄いんですが…万が一という…」ゴツン!「…てて!」「くどいぞ!若月…くだらん詮索はやめて、回りを警戒しなさい!」

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