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魔術狩りを始めよう
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魔術狩りを始めよう 4

「ふん…やっと姿を現したか…小賢しい小娘が…」女はフツノを地面に突き刺したまま、腕を組んだ…
「何よぉ…結構楽しかったでしょぉ?」
「この私を少しでも手こずらせたことは評価してやろう…しかし、貴様がこの場で狩られる事実は変わらない…」
「ふふ…余裕をぶっこくのは早いんじゃなくて?キレイなお姉さん?」
「先輩…フ…フツノが…」女がフツノに目をやると、ズブズブと影に取り込まれていた…

「これは……物を取り込む影か。さっきの獣といい、よくもまぁ堂々と世の法則を無視できるな」
 敵前で武器を失ったことなどまったく意に介した様子もなく、あきれ顔で呟く。
「あらら、えらく余裕があるのね。ワタシのこと舐めてるの?」
「ふっ、舐めているんじゃない。冷静に考えるほど、フツノがなくてもそこらの魔術師なんぞに負ける気はしないだけさ」
 事も無げに放たれた言葉に、少女の表情に怒りが混ざる。
「……自分の魔術に自信たっぷりのようだけど、そんな――」
「安心しろ。私は魔術を使えないからな」
「!?」
「またまたぁ…そんなジョーク笑えないわよ〜お姉さん!」
「ジョークなものか…でなかったら、若月のような下僕を飼ったりはせん…」
「下僕って…酷いじゃないですかぁ!試験直前だってのに、こうして手伝いに来てんのにぃ!」
「女々しいぞ!若月…だから下僕だというんだ!パートナーと呼ばれたかったら、この程度の能力者は一人で倒してみせろ!」
「そんな理不尽なぁ…」
 可哀相なくらいに狼狽し文句を言う若月。女はその様子を楽しそうに見つめながら、
「冗談だ。攻撃の力が無いお前が、三流とは言え魔術師とぶつかって勝てたら、驚きのあまり世界恐慌が起きかねない」
「……」
 半眼で見つめる若月は無視して、再び少女に問い掛ける。
「――さて、覚悟は済んだかな?」
「ふんっ、魔術師のワタシが、無能な女と臆病男を前にして何の覚悟がいるの?」
「質問を質問で返すとは無礼だな。まぁ、私は心が広いから答えてやろう。――負ける覚悟だよっ!」
 言うと同時に地を強く蹴り距離を詰める。
「遅いわよっ!」
 少女は手元から何か黒い球を取り出すと、女に向けて軽く放る。すると見る間に球は形を変え、先程の数倍の獣へと姿を変えた。
「成る程、それが手品の種か」
 女の口端が僅かに上がる。その時には、既に獣と肉薄している。
「木偶人形は邪魔だ!」
 言うが早いか、女の姿は宙に舞う。闇色をした獣を踏み台に、更に高みへと跳び上がる。
「何をしてるの、追いなさい!」
 少女の叫びと共に、獣もまた女を追って壁を蹴り、踊りかかる。

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