PiPi's World 投稿小説

魔術狩りを始めよう
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 1
 3
の最後へ

魔術狩りを始めよう 3

 咆哮。
 一閃。
 結果、生じるは闇夜を裂く銀の軌跡。
 次の瞬間には獣の一匹が、体を上下に二分されて闇に溶けるように崩れ落ちる。
 女はそれを見届けもせずに二匹目に肉迫、左手を薙いだ。
 いつの間にかそこに握られていたモノ、令刀と呼ばれる二メートル以上の長刀が二匹目も易々と切り裂く。
「若月っ! 『ツクヨミ』でも使って隠――って、とっくにやってるようだな」
 その細腕からは想像もつかない速さで刀を振りながらも横目をやると、若月の姿は見当たらない。『ツクヨミ』と名付けた力を使い隠れたのだろう。
若月の『ツクヨミ』は、月の形によってその効力を変える。新月の今日は存在の痕跡を完全に隠滅する迷彩となるのだ。
また一つ、夜闇に銀閃が走る。二つに断ち割られた獣はどうと地面に落ち――どろどろと溶けるように崩れていった。
(血が出ない…やはり魔術で創られた仮初めの躰か)
そんな事を考えた時には、既に残りの『獣』は片手で数えられるほどまで減っていた。流石に慎重になっているのか、遠巻きにしてなかなか近付こうとしない。
「どうした、来ないのか? ならば、こちらから――」
 行くぞ、という言葉を放つと同時に再び眼前の敵へと突進、影のようなその体を両断すべく、逆袈裟に刄を走らせる。
 今まで見た獣の性能では、避けることも防ぐこともできないはずの一撃が寸分違わず敵へと進み、

 空を裂いた、それだけだった。

「なっ!?」
 予想外の状況に驚愕の声を上げたが、異変はそれだけではなかった。
 辺りを見回しても、残りの獣の姿が無い。わずかな痕跡すら残さずに、全ての敵が一瞬にして消えさってしまったのだ。
「せ、先輩…したした!」御刻が自分の足下を確認すると、明らかに自分のものではない影が…
「ははははは…元よりこれが狙いだったわけだな…影を分散させ、獣形に定着させた…どおりで気が分散して感じられた訳だわ…」
御刻はフツノを高々と掲げると、フツノは一層輝きはじめた…
「影を消したら…どうなるかしら!」
彼女は輝くフツノを怪しげな影へと一気に突き立てる。途端、空間自体が歪み――怪しげな影と共に消失した。
一通り周囲を見渡し、彼女は徐に背後に向き直ると声をかける。
「若月、もういいぞ」
すると、先程『影』が消えた時のように空間が歪み、若月が姿を現した。
「先輩、なんで分かったんです? 『ツクヨミ』発動中は気配だって消えてるはずなのに……」
「お前の行動パターンからすれば容易に想像がつく。どうせ私の背中の辺りで隠れていたのだろう?」
うっ、と痛い所を突かれた顔をする若月。微笑を浮かべてフツノを仕舞おうとした彼女の顔が――突如、強張った。

「あーあ、ワタシのオモチャ、壊しちゃったんだぁ」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す