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魔術狩りを始めよう
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魔術狩りを始めよう 2


グルル…グルルルゥ…

微かに響く、獣のような低い唸り声。それも複数だ。こちらの周囲を囲んで、ゆっくりと近づいてくる。
「若月、くれぐれも――」
「言われなくとも。オレのは攻撃向きじゃありませんからね」
「……オレの、か。ふふっ、面白い事を言うやつだな」
 笑われたからか、若月は不満ありげな顔で反論する。
「言葉のあやですよ。所詮オレのこいつは魔導書の影響を受けた借り物、自分で手に入れた物じゃないことぐらい百も承知です」
「ほう、力に溺れているかと思ったが、意外や意外」
「……オレが使えるのは魔導書という歪みのほんの名残。真の魔術は世界そのものを作り替えるモノ。――耳にタコができるほど聞かされましたからね」
「そう。禁忌の書の影響で歪まされたのが、お前や――こいつらの飼い主だろうな」
 そう言って向ける視線の先は、無数の異形の気配で満ちた闇。すでに周りはすべて囲まれ、数えきれない殺気が二人を包む。
「ったく、魔導書のせいでオレの貴重な睡眠時間が……」
 ブツブツと愚痴り始めた若月に、女は笑いかけた。
「ふふ、そう言うな。目には目を、歯には歯を、そして魔には魔を以て。世の理より外れたモノは、更に外より押し戻せ。我らは魔術に終わりと安寧を告げる者! 魔術を狩り、世界を正す者!
 ――さあ、魔術狩りを始めよう!」
その獣は影そのもののようであった…闇の塊のような漆黒の姿に黄色く眼光を放っている…「し…召喚獣?!ですかぁ…?」若月は脅えた様子で言った…「いや…そんな大した者ではないが…近くに操っている者がいるでしょうね…」「近くって…場所は?」「うん…結界を張って私の意識に干渉してきている…小賢しい奴だ…」
しかし、口調とは裏腹に彼女の口元には笑みが浮かんでいる。その意味するところは、絶対の自信。
「――来た!」
殺気が一気に膨れ上がり、漆黒の影と共に二人に襲い掛かる。と同時に、闇の中に一振りの銀光が生まれた。
「先輩、早く!」
「ふふ、焦るな若月。フツノ、『抜刀』!」

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