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飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

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飛剣跳刀 61

「中は、……なんだか、迷路みたいになってたわ。壁は、だいたい硬い土で。降りた真下あたりはくずれた土も積もってたけど、それ以外の場所には何も跡が見つからなかった」
 そう、彼女は報告したのだった。
「ふむ……」
 えらそうに頷いたくせに、直後、飛衛はあっさり断言した。
「しかし、それではさっぱり判らんな――人が落ちたやら落ちなんだのやら、落ちたものがあるとして、それが人やら獣やら、さらにそいつが迷路に入ったやらはい上がってきたやら」
 そこで例の「どうしたものやら」という言葉をはさんだのだ。
「なにか……というか、十中八九、だれか、が落ちたのは確実」
 芙蓉は思い出す顔で、
「それに、落ちたら上がれないのも確実。ま、あたしは忍法使ったら縄で引っぱってもらわなくても上がれたし、そいつみたいに」
 燕雪衣に眼をむけた。
「身軽だっていうなら、また話はべつだけど」
「……」
 燕雪衣は、それには答えなかったが、
「あの迷路に入ったなら、厄介だよ」
 そんなことをいいだした。
「ここらの地下には、それこそ縦横無尽に通じているからね――よく知らないまま入れば、方向を失って、迷って、二度と出ちゃこれないのさ」
「そいつはなかなか、ぞっとせんな」
 飛衛はうなった。
「だが、そうとは知らずとも……一見でその性質の知れぬ場所に、だな、あやつ――城太郎が、はたして入って行こうとするかというば、実に、あやしいが」
「うん、あたしも、城太郎なら入らない、落ちたところから動かないと思う」
 芙蓉がいった。それで、穴から上がってきてからやたら平静なわけだ。むしろ、楽しげですらある。
 と、飛衛がはたと膝をうって、
「……そういや、ティンバロはどうした?」
「さあ? 知らない」
 芙蓉が答えた。知らないのは真実だろうが、それを伝えただけには聞こえぬ「知らない」だ。
「なあるほど」
 飛衛はうなったが、
「何が、なるほどよ」
 芙蓉ににらまれて、先は口にしなかった。が、……芙蓉は、穴に落ちたのはティンバロだと思っているのだ。消去法で、城太郎は落ちていないということになる。で、このご機嫌というわけだろう。
 不意に、燕雪衣が呟いた。
「……私の弟子もいないようだね」
 芙蓉は知ったことかとばかり無視したが、
「うむ、落ちたかどうかはともかく――城太郎もおらんことにはかわりない」
 飛衛の言葉にはとびあがって、
「……どういうこと?」
「雪衣どのがお弟子のことをいったのも同じ理由であろうと思うが」
 燕雪衣が頷いた。
「かりに、ティンバロとやらが落ちたにしても、じゃあ見つからない者はどこに行ったのかねえ? 弟子もだけど、霊龍とも会わない……三人も、どこに消えたんだろうね?」

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