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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 1

ランダの宿場町。ここから先は砂の吹き荒れる荒野である。集う者といえば、いまから道なき荒野を横断しようという連中ばかり。
「しかし、たまには集落もあるだろう?」
尋ねたのは、30前後の男、ヒノモトという国から来たと当人はいう。楊生飛衛。それが名だ。
尋ねられたのは、飛衛の泊まっている宿の亭主ヂュルベ。答えていう。
「まあ、50キロにひとつくらいは、小さいのが。お客さんは頑丈そうだが、お連れさんは大丈夫かね」
飛衛は一人ではない、確に連れがいる。15、6の少年。こっちは、牙月城太郎といった。それにしても、亭主のいうとおり、飛衛の渋味のある男前にくらべてボンヤリした顔付き、心配になろうというものだ。
「なに、大丈夫…こいつ、本気でトロいけど一応忍者だし」
「はい?」
ヂュルベ、よく分からぬ顔だ。
そもそも、ヒノモトなどという遠い島国からこの二人がやってきたのは、とある人間を探すためだが、最初シャリビア、つまりこの国にいると聞いていたのに、着いてみて消息を尋ねれば、なんと幻の西方王国ゼイムクへ去ったらしいことを聞いた。
それを追って、二人は西方の入口、ランダにいるのだった。
西方は、未知である。荒野と、その先の砂漠地帯、さらにカハン国、ミン帝国辺りまでは多少の交流がありはするのだが、それを越えてゼイムクというと、存在こそ謎の塊。
「遅いな」
飛衛が呟くのは、ここで待ち合わせている、とりあえずミン帝国までの水先案内人ティンバロの姿を探してであった。
「…先生」
と、そのとき城太郎が飛衛の袖を引っ張った。二人は師弟ではあるが、そうなった経緯はまったく情けない限りで、…つまり、あまりのトロさに忍法の師のほうから見放されたところを、飛衛が引き取った、否、半ば押し付けられた。飛衛としては、愚鈍で間抜けながら、誠実で真面目なこの弟子を、そう悪い目でみてはいないが。

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