PiPi's World 投稿小説

飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 49
 51
の最後へ

飛剣跳刀 51

「むむ…」
 と、飛衛はうなった。どうして修練に人がいるものやら、さっぱりわからない。が、これ以上詳しい説明を求めたって、どんどん本題から逸れてゆくであろうことは今までの相手の反応を見れば容易に予測できる。
 で、
「わかった」
 と答えて、とりあえずそういうことにして、
「…では、さっき殺したとかいった〈そいつら〉──は、どこにいた、どんな連中だ?」
 もっと単純な答えの返りそうなことを訊いた。
「どこにいた──って」
 燕雪衣はキョトンとした顔に、さも当然といった口ぶりで、
「このオアシスにいたんでなけりゃ、わたしのいる理由もないじゃないか」
「……」
飛衛のしばらくの沈黙のあと、
「そう、そんならあの足手まといどもってもういないんだ」
なんということもない口ぶりで、芙蓉が理解の早い事をいった。
「一人残らず…か?」
飛衛が真偽を尋ね返しもせずに、さらに質問を重ねたのは、燕雪衣のヘンな正直具合を承知しているのと、そういえば、さっき、筝を鳴らしたとき――返事のように笛の音が聞こえてきたのも、たしかその方角であった、と思い返して、納得したからというのもある。
「むう…」
彼は唸った。唸る以外に、何も思いつかなかったのだ。
「ちょっと、センセ」
芙蓉が飛衛を小突いて、
「牛っ」
耳元で鋭い声をあげた。一瞬、理解しかねた顔を飛衛は上げて、
「モウ?」
鳴きまねをしてみせる。
「ばかっ、違う!」
じだんだふんだ芙蓉の横で、燕雪衣が不意に微笑んだ。
「なによ!」
芙蓉がかみつく。
「何が」
燕雪衣が涼しい顔で芙蓉を見た。
「笑ったでしょ、こっちの会話盗み聞きして!」
「笑う…?」
奇妙な単語を聞いたように問い返したくせに、燕雪衣は同時に口の端を歪めて、嘲笑するような表情を浮かべた。
「また笑った」
今度は冷たく決め付けた芙蓉は憤然として言い放った。
「いいわ。勝負しようってんなら、受けて立ってやる」
「いや、こらっ、…」
飛衛が手を振り回し、芙蓉の片袖を捕まえた。
「何をやる気だ、何を!いまは別の話をしておったろうが。どうして、そう雪衣どのに突っ掛かる」
「ふん」
と、芙蓉は鼻をならして、
「センセがその女に勝手に鼻の下のばすんなら、あたしがその女とどう付き合おうが、それも勝手でしょ」
「それは…」
一瞬、飛衛はくちごもったが、すぐにニヤリとして開き直った。
「美女が嫌いな男がいるか!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す