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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 28

「あったって、…何が?」
「あのなあ、普通こんな場所であったっていやぁ、何のことか分かるだろ?」
 先のが城太郎、後のがティンバロだ。
「オアシス!」
 珍しく、芙蓉はティンバロに牙を向かない。少女だけあって、この砂塵を洗い落とせることに浮き立っているらしい。
「どっちだ」
 飛衛の口ぶりは、そんな雰囲気など無視して、世間話でもしているようだが、その無粋にすら、芙蓉の上機嫌は崩れなかった。
「あっちよ!」
 指差して、
「頑張れば、暗くなる前につけるわ。…ハイッ!」
 と、駱駝を急がせる。怖いもの知らずと表現すべきか、あっという間にパーティの他の者をおいて行ってしまう。
「あ、芙蓉…」
 城太郎が上げた声は間抜けだが、動作ばかりは敏捷に自分の駱駝に飛び乗って、これも駆け出した。
「…どうして、あいつらばっかりは元気なんだろうな?」
 飛衛が苦笑混じりに呟いた。
 まあ、内容としてはごもっともとしかいいようもない。
 なにしろ、この一組以外、パーティの者といえば犬みたいに舌を出してあえいで、足元もおぼつかぬ有様だ。どろんとした目で他の奴には見えぬものを見ているらしいのも、数人いる。
 さっきのオアシス発見すら耳に入っていない様子の連中の中から、飛衛は適当に一人引っ張って、
「オアシスだと!」
 耳元にどなった。
「どこだ、どこ…」
 カサカサした声で、そいつが喚く。
 やみくもに走り出しかけるのを、飛衛は腕で捕まえる。
「ばか。そっちじゃない。道のないところで迷ったら、始末におえんぞ」
 やれやれと溜め息をついてから、砂よけのマントをとって、振り回した。
「おおい、オアシスがあったぞ!ついて来い!」
 ついて来いといっても、彼とて芙蓉の駱駝の足跡を追うしかないが──それにしても。
「意外に、っていうのは失礼かもしれねぇけど…旦那もお人好しだねえ」
「べつに、そんなわけでもない」
 飛衛は否定した。
「と、いうのもだな。…これだ。どう思う?」
「わっ!」
 ティンバロは思わず飛び退いた。
「あ…あのなあ、どこにコレ、なんていいながらマントの下からシャレコーベ出す奴がいるんだよ!」
「ここに、いるだろう」
 飛衛はニヤリと笑う。
「ま、ともかく口で説明する手間は省けたろうが」
「何のつもりだよ、気味の悪ィ」
「だからよ、見れば分かる」
 いうなり、彼はティンバロにそれを放ってよこした。

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