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飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

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飛剣跳刀 29

「わあ!」
 ティンバロはそれを受けとめるどころではない。奇声を発してまた飛び退いた。
「なんで普通に投げるんだよっ!」
「お前こそ、なんでよける」
「こーゆーモノに関しては普通に扱うのが異常だろ!?」
「どうしてだ。生きている人間に比べれば、いろんな意味で剣呑ではないと思うが。噛みつくでもなし、謀を巡らすでもなし」
 飛衛の答えは、とてつもなく現実的だ。
「…だから、安心して、拾って眺めてみろ」
いけしゃあしゃあとそんな事を言う飛衛を軽く睨みつけるティンバロ。しかし、何を言っても仕方がない相手だと分かっている。諦めに似た感情で、ティンバロは恐る恐る先程自分が投げたものに近づいた。さすがに拾うこと、つまり手に取ることはためらわれたので、ティンバロは砂地に転がったままの頭蓋骨を眺めた。それは、砂漠の陽光にさらされた砂地よりも白い表面を、不気味に光らせていた。そして、生前は眼が埋まっていた穴は、底知れない暗さをのぞかせている。ティンバロはそこまで観察し、首を傾げた。何かが穴の中で動いたような気がしたのだ。
「おい」
 そのティンバロにかけられた飛衛の声には、いくらか呆れたといった響きがある。
「誰が、そいつとにらめっこしろといった?」
「え?だってこれ、中に何か…そういうことじゃねえのか?」
 ──間。
 そして、
「暑さで頭がどうかしたか?」
 隻眼をしきりにまばたかせつつ、飛衛が訊いてくる。
「何だよ?人のことバカにしやがって」
 いささか気を損ねたティンバロがいい返す。
「いいか、マトモに考えろ」
 と、飛衛の口調はやや説教くさい。
「シャレコーベの中に何か入るか?いや、というより…シャレコーベの中に何か入っていたら、持ち上げたりすれば落ちるに決まっておろうが。俺が見ろといったのは、頭骸そのものだ」
「あ」
 ティンバロも、気付いた様子で、そんな声を発した。
 が、もう一度目髑髏にを戻せば、
「…だけど、中に何かいるのはマジなんだけどな」
「はあ?」
 珍しく、飛衛は間の抜けた声を出して近付いてくると、
「どれ」
 一緒になって髑髏をのぞき込む。そして、
「ああ、確かに」
 飛衛はティンバロの傍らに進み、頭蓋骨を持ち上げた。
「わっ・・・!!」
 頭蓋骨に入っていた何かが、しゃがんでいたティンバロの頭に落ちてきた。
「あぁ、こりゃ砂蜘蛛だな」
 飛衛のつぶやきを聞いて、ティンバロの顔が青くなる。
「旦那っ!呑気なこと言ってないで早く取ってくれ!!」
 砂漠に棲む生物は、毒を有するものが多い。獲物を生きたまま麻痺させ、良い状態を保つもの。逃がさないために、速効性の致死毒を持つもの。様々な毒があるが、全て砂漠という厳しい自然環境を生き抜くために不可欠なものだ。

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