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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 3

「まさか…」
いいかけたティンバロの声までもが、凍りついた。 殺気。空気すら凝らせるほどの圧倒的な殺気。
「散々苦労したらしいが、報われんかったな。ご苦労さん」
飄々たる口調でいって、ニヤリとした。
「しかし、ティンバロ。これほどの殺気を放つ連中に狙われるとは、おまえも何者だ?」
答える暇は、なかった。というのも、飛衛の言葉に重なって、ヒュンッ!という唸りが響いた為だ。
「おい、おまえのお得意様か?」
ティンバロを引きずるように、手近な大木を背に出来る場所へ、飛衛は跳躍した。その最中の台詞である。
「呑気に言わんで下さい、こんな時に!」
ティンバロが絶叫した。
さっきまで二人のいた場所には、十本近い矢がささっている。
「そら来たッ」
飛衛の、妙に楽し気な声と共にまた数本のの矢が、タタ、タン!と木の幹に突き刺さる。木の裏へ回り込むのが一息遅ければ針ネズミになるところだ。飛衛がきいた。
「ティンバロ…ほんとに、知り合いと違うな?」
「知るか、もしそうだったとしてもたった今から仇同士でかまわねぇ」
非常時ゆえか、ティンバロの口調はちょっとべらんめえに戻っている。
「なら、ぶん殴っても構わんな」
確認ではなく、断定の口調で飛衛がいった。
「どうやって!?」
答えを、飛衛はいきなり行動で示した。ティンバロの襟首を掴んで、ずかずかと木の陰から歩み出したのだ。
「ぎゃーっ、殺す気か、人非人!」
悲鳴をあげるティンバロに、
「俺のカンが当たってたら、十中八九は大丈夫だ、多分!」
飛衛は、何が根拠になっているやら分からない答えを、えらく自信満々でいいきった。
 それどころか、
「おいこら、射つならこいつを盾にする」
 矢の出処とおぼしい方角へティンバロの躰を向けてしまった。飛衛の中じゃ、後をつけながら手を出してこなかった連中、だったら殺すのは困る理由があるのだろうと考えている。だから、ティンバロの感じた恐怖の割に危険はないが…無精ゆえで説明を省かれたのこそ、いい迷惑。

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