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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 2

「なんだ」
飛衛が、お国ぶりの深編笠ごと振り返った。宿に入ってからもずっとかぶっているのは、何か顔を隠す理由でもあるのか?
「先生、店の人が、外で知り合いらしいのが待ってるって伝言を」
飛衛には、容易に見当がつく。しかし、まっすぐに入ってこないのがいぶかしい。
念のため、彼は弟子に尋ねた。
「そいつの人相風体は?」
「あ…きき忘れました」
「間抜け」
…今更だが。
「まあいい。たぶんティンバロだ。何か事情があるようだな。俺が見てこよう」
「あの、おれは?」
「あっちがワケありらしいのに、おまえのような機転のきかんやつが連れていけるか」
「あ、ほんとだ」
「…城太郎、おまえが身のほどをわきまえているのは褒めてやるが…」
「ありがとうございます」
「しかし時々、こっちが情けなくなる」
溜め息をついて、出ていった。
しかし、いざ問題の人物を見て、彼は首を傾げた。飛衛を見て近付いてきたのは、こってり厚化粧した明らかな娼婦だったのだ。
「……」
無言。そして、時だけが流れ…娼婦がいきなり投げキッスをした。
歩いたり、ましてや派手な身振りをすれば、そいつが変装していたって正体はバレるものだ。
「やっぱりおまえか。どうした?」
娼婦が口笛をふいていう。
「やっぱ旦那は気がきくね」
こいつは間違いなくティンバロ、今の言葉は、飛衛が名を不用意に呼ばなかった事に対してだ。
「…旦那」
ティンバロは近付いてくると、飛衛に口をよせて、
「どうも、つけられてるんですよ」
「ほう、それでその格好」
「さいです」
「なかなか、似合う」
「自分じゃキモいんですけど」
冗談はよしてくれ、と目がいっている。
「だが、そうでもいわんと、一つの意味もなくなるからな」

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