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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 15

「へえ、こいつが、道案内、ねえ…」
 話しかけてきた男は、胡散臭い、品定するような眼でティンバロをみた。
「俺にいっぱい食わせてやろうって腹なら、その前に手前をバラしてやる」
 ティンバロが精一杯顔をひん歪めて睨み返した。こんなことをするのは、砂漠越えのパーティがどんなしろものかよく分かっているからで、──つまり、同じパーティ内でも気を許せないのである。
 ──かくして、荒野の旅は始まった。
 ティンバロにしてみれば、さる理由ゆえにシャリビアからは高飛びしたく、ただし一人で国外逃亡など命を捨てるようなものだから、適当に、事情をしらぬ奴にくっついたつもりで、あまり選り好みをしてはいなかったし、したくともそんな余裕はなかった。
 だから、それなりにしていた覚悟だが、…どうやら、大半空振りしそうな模様である。とにかく、手はかからない。
 食料の調達というのは、本当に、極稀にある集落を通りかかる場合に、自分達の持ってきた物と物物交換で手に入れるのだが、それで損をしないためには相当な技術が必要なのに、芙蓉はどうしてか、最初の村に入るや否や元手なしで水筒入りの水を巻きあげてきたし、意外なのは、城太郎のほうも干果を大量に手に入れてきた。…なんでも孫をなくした爺さんの話し相手になってやっていたというが、よほど気に入られたのだろう。
 そしてまた、こうした場所での安全な床の敷き方というやつがあるのだが、これまたあったりものにしてしまった。ただ、実際に寝る場合には場所による安全性──自然災害の恐れより、人災のほうが心配なものだが、これまた、荷物に忍び寄った一人が飛衛の「馬鹿」という一言ですくみ上がり、芙蓉に忍び寄った一人は、次の朝には消えていた。そいつに何が起こったのか、誰も知らない。
 そうした旅が続くこと約一月。一行38人は、ようやく砂漠の入り口に立っている。いよいよ、住む者もない場所へ踏み込むのである。パーティはすでに駱駝を最後の集落で買っていた。それを売った老人は、『気ィ付けーだよ、オアシス一つ見逃せば、十中八九はお陀仏だでのう、ヒョヒョヒョ』と、あまり陽気でない忠告をくれたものだが。

 蒼天。烈日。
 砂の黄色が、白とすら見える。

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