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飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

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飛剣跳刀 12

「どれどれ」
 脇から飛衛が覗き込んで、
「何やら、いわくありげだな」
 もう片脇から覗き込んだティンバロのほうは、…ごくりと唾を飲み込む音をたてたが、こちらは何もいわなかった。
「まあ」
 飛衛が、面白そうな笑いをよどませて、
「おまえが、拾ったか、見付けたか、…とにかく、それ以上でないことを願おう」
「ふん、それ以上のことってどんなことかしら?」
「たとえば、だな…他の連中が血眼になって探していたのを、横からかすめ取った、とか」
「どうしてわざわざそんなことをするなんて思うのよ?」
「血眼になって探されるものだ、どんな意味の価値であれ、かなりのものであることは、殊におまえみたいなやつには自明だろう。価値があるものとなれば、ほれ、そこがおまえらしいというべきか…自分の懐に入れるより、城太郎にやりたいと考えて…」
「白状するとね、あたしは全ッ然欲しくなかったの。でも城太郎は持ってたほうがいいかと思って。…そしたら、あいつらに対して切札になる」
「ほう」
 飛衛の意味深な呟きに、芙蓉がしまったという顔をする。
「おまえは、切札などその頭があれば必要ない、か。…と、いいたいのはそこではない。あいつらってのは誰だ」
「知らない」
 芙蓉は居直った返答をした。
「としても、ひとつ確かな事があるだろう」
「そうね。でもね、あたし、人のものをかすめ取ったりしてませんからね」
「しかし、 あいつらってのは…」
「そうよ、これを探してた連中。話をきいてたら、これの場所が分かっちゃったから」
 飛衛が嘆息した。
「ところが話をしていた当人たちは、さっぱり思い当たっていなかったんだろう。まったく、おまえの頭には恐れ入る」
 詳しく話をきけば、数日前、ここランダの三つ四つ隣の町で──町ごとに十キロは離れているが──、彼女は数人の男の会話を耳にしたという。…どうやら、一月ほど前に、その町の外れで殺しがあったらしい。この辺りの人情というのは、宿場町は別としてよそ者に冷たい。人目につく町中であればまだしも、外れで殺された者など、放っておかれることもしばしばだ。空気が乾燥しているから、腐らず匂わないためもあるかもしれない。

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