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飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

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飛剣跳刀 11

 …呆れた男である。要は、海外旅行に胸はって行きたかっただけか。しかし、この当時の海外旅行というものは実に危険千万、二、三割の確率で難破し、その確率にしたがって命も危険だ。
「…それをセンセに頼んだ人、ぜーったい後悔するわ。…ところで、どうしてシャリビアで人を捜すはずがこんな所にいるの?」
「それはだな、聞き伝えの話だが、どうやらゼイムク製の楽器を目にし、興味をかきたてられ…」
「その爺さんが?」
「ああ」
「それで、今度はゼイムクへ一目散」
「…と、いうことだ」
 ──飛衛と城太郎のゼイムク行きの理由ははっきりした。だが、芙蓉にはさらに訊きたいことがある。
「じゃ、このカマ野郎は?」
「なっ、…そりゃあねえだろ!俺はティンバロってんだ、せめて名前で呼びやがれ。それに化粧だってもうとっくに落としてらぁ」
「だったらそのヒラヒラしたケバい服も一緒にどうにかしたら?」
 この二人、──というより芙蓉のほうが一方的に、口を開けば棘が出る。もっとも、それなりに多少の理由はあって、芙蓉をみるティンバロの表情は、その度に、彼女の可憐な美貌にゆるむのだ。むろん、芙蓉の性格のゆえも大きいが。
「こらこら、まったく、話が進まん」
 飛衛が苦笑した。
「こいつはな、ミン帝国までの道案内だ」
「ふーん・・・こんなのに案内されたら、どこに着くか分かったもんじゃないと思うけど?」
芙蓉の端正な唇が、嘲るような笑みを形づくり、毒を吐く。
「なっ」
「あ!そーだ、城太郎♪」
反論しようとした、ティンバロを目で刺して、黙らせる。そして、城太郎に花のような笑顔を見せる芙蓉。先程までの、刺はどこにもない。
「せっかくだから、来る途中で、お土産用意してきたの」
手のひらに乗った包みを差し出す。
「ありがとう。・・・何?」
「開けてみて?」

「“買った”んじゃなくて“用意した”のか」
飛衛がぼそっと呟く。
「だって、国からお金を持ってきてはいたけど、いつ会えるかわからないのに簡単に使えなかったし…それに、買うっていって見付かるものでもないと思うし。拾ったっていうのか、見付けたっていうのかは、微妙なところだけど。これ見た瞬間に、城太郎にあげたいと思ったの」
「ふぅん」
 返事をしたのは当の城太郎だが、全然感動的ではない。まじまじとそのものを見つめて、
「…何だろう?」

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