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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 10

 答えた飛衛を、ふいに芙蓉はきっと見た。
「ねえ、もし同じことセンセがやってたら承知しない」
「俺が、同じこと…?」
 飛衛は一瞬考える様子であったが、いきなり笑いだした。
「先生…あのどうかされましたか…?」
 城太郎が事態についていけず、おろおろと師に質問するが、
「ははあ、お前、気付かんか」
 飛衛は構わず笑いこけ、
「芙蓉、…?」
 と傍らの美少女に訊いたとて、そちらも笑声をあげている。
「何をそんなに笑って…」
 憮然とした顔の城太郎をよそに、脇で聞いていたティンバロまでが笑い出す。
「ははっ、お前、ちょっと考えてみたらどうなんだよ?こいつはお前のお師匠で、お前が弟子。…だろ?」
「ああ」
「お前が師匠に飽々されて、マトモなこと教えて貰えねえのが心配なんだってよ、この嬢ちゃんは!」
 城太郎はなおも考え込んだ。
「あ…」
 そんな声をあげたのは、一分もたってからだ。
「芙蓉…おれ…ボンクラ弟子か?」 芙蓉は答えずに、いっそうおかしげに笑いつのる。
「冗談だ、冗談だ」
 飛衛がこれもますます大笑しつついった。
「いや、たしかにお前はボンクラだが、弟子としては上出来だ。叩き出したり、いい加減に扱うつもりはない」
 そもそも、飛衛は弟子こそとるが、どの程度に扱うかは、弟子本人の態度に因る所が極めて大きいのだ。
だからこそ、剣そのものに関して──弟子入りする他の理由はどうあれ──真剣に向き合う奴には、真剣に教える。逆に、剣そのものに向き合わずして結果を求める奴は身分すら構わず、実際ぶん殴ったことすらある。…城太郎が前者後者いずれかは、いうまでもあるまい。
「で…何をどこまで話したかな?」
「爺さんが、楽の伝授ほっぽって、シャリビアまで来てた理由。本題は、ね」
「本題は、とつけるところをみると、何やら他に話があったかな?」
「伝授するとかいう楽の話。どれくらいの程度のものなのか、そもそも正しい状態のまま伝授されてきてるのか」
「…だったな。しかし、そっちの話はどうでもいいな」
「…よく、爺さん追っかける気になったわね」
「ふふん」
 と、飛衛は悪戯ッ子みたいな笑顔になって、
「実はさ、そんな頼みを引き受けたのは、堂々と海を越えて遊びに行く口実だ」

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