ユニウス条約がザクの制式採用に決め手になったがエースパイロット向けとは言い難い。戦端が開いた以上はザクのみでは難しいのだろう、アスランも操作して分かった事だが近接戦闘に持ち込みやすい状態ならかなりの戦力だ……。
「同じくＦＡＩＴＨであるアンリが担当するグフは少々仕様変更している」
「……破砕球」
アスランはグフイグナイテッドから出て端末に表示されたグフを見て苦笑する、前の戦争でドミニオンに搭載されていた航空機可変型ＭＳを思い出した。破砕球はスレイヤーウィップの先端に装着して振り回す訳だ、原始的な武器だがシンプルだ。
「今頃はトワイライトに合流している、何時核攻撃の動きがあるかもしれないからな」
「諦めた筈じゃ？」
「あいつらは諦めが悪い……中には大西洋連邦上空でニュートロンスタンビーナ照射しろっていう奴も多い」
そんな事されると地球環境に深刻なダメージが来る。

特に親プラント国家である“大洋州連合”を裏切る事にもなりかねない……この国家はオセアニア地域の複数の国家が統合して誕生した国家であり大西洋連邦と対抗する為にプラントと手を結んだ、オーブ侵略戦争時には難民を受け入れモルゲンレーテ社の技術を取り入れたＭＳ開発をしており、プラントにとっては一大拠点の一つ“カーペンタリア”がある以上は避けられない。大洋州連合としては何時までもザフトのＭＳを使うのも国家の威厳にも関わる。ナチュラルも居るので複座型になっているのが特徴であり、これがユニウス条約下でも有効だ。
「目下の問題は黒海を出た後に待ち構える連合とオーブ派遣軍ね……アズハ代表が誘拐されたから派遣したって感じね」
「だが、セイラン家はオーブ国内では評判は悪い……何よりもアメノミハシラに居る軍神から見ればアークエンジェルにいるキラ.ヤマトらの行動は黙認している見方がある、彼女の性格だ……止めに入るぞ」
ハイネの指摘にアスランも頷く。


「で、ガルナハンで投降した連合兵らはカーペンタリアに移動っていう事ね？」
「それは予定通りさ、何も本国に護送する程の価値がある将校はいなかったしな……」
これが連合の実情である。
「大洋州連合のＭＳ配備の割合は陸戦と海戦主体が多いわね」
「領土と領海の割合から見ても空戦にＭＳまでは限られている箇所って感じさ……それにあの国はスカンジナビア王国同様、従来の機動兵器との組み合わせを前提に開発していたからなぁ」



大洋州連合首都は旧ニュージランド首都ウェリントンである……連合が支配下に置いてはいるが治安は可也乱れている。現政権中枢はオーストラリアにあり連合も制圧を進めようとした矢先にプラント核攻撃が失敗に終わり、首都があるニュージランド、熱帯雨林が広がる島々が点在するパプアニューギニアと言われた地域での作戦行動も儘ならない状態に陥った。




これも核攻撃で全て終わると妄信した大西洋連邦中枢の判断ミスが齎した悲劇、大洋州連合にとってはこれが追い風になりつつある。


「敵撤退します」
「ー追撃止め！ー」
肩には大洋州連合の紋章があるが掠れており如何にこのＭＳが密林地帯での作戦行動をしていたのか分かる……大洋州連合軍制式ＭＳ“ＺＧＭＦー１０１７ＯＧ　ジン.オージー”と呼ばれる二機を中心にしたこの部隊はパプアニューギニアにある島にて抵抗運動をしている。ジン.オージーは先の戦争にてカーペンタリアの一角で製造された機体でありジン.オーガーに複座型コクピットを備えている。
ナチュラルの兵士も操縦するのはザフトにとっては想定してなかったが大洋州連合は大西洋連邦との決別しプラントと手を組んだ。ザフトとしても戦力差を埋めるには大洋州連合にＭＳ供給も仕方ないのだが、オーブ侵略戦争時には難民を受け入れモルゲンレーテ社の技術が流入、大洋州連合は国産ＭＳ開発を決意したのも今後の為である、程なくして大洋州連合は地球連合に侵略を受けるも首都があるエリアと周辺地域に居た民間人は豪州に避難……首都であるウェリントンを占拠したが地球連合の旗が掲げれられたのは自爆により倒壊した大統領府であり首都各所に仕掛けられたブービートラップに引っ掛かった地球連合の兵士が多数出た程だ。密林の島々があるパプアニューギニア付近では密林戦にもＭＳが持ち込まれたが大洋州連合が運用するザフト系ＭＳが優位であり地球連合のＭＳは各坐する有様である。最もダガー系が多くガンダムタイプのＭＳが出てこない……これには理由がある、ガンダムタイプを投入する程の価値が無い場所かそれともパイロット不足か、敵も先のプラント核攻撃失敗により部隊丸ごとに左遷されたらしい……。