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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 9

口の中を切ったようだ。
鈍い…血の味がした。
「うるせぇ…お前はただ俺に金を貢いでりゃいいんだよ!」
また殴られる。
また蹴られる。
また苛められる。
朝から僕は、公園でクラスメートに殴られ続けていた。
まるでサンドバッグだ。
顔は腫れ、身体全体が痛い。
大した抵抗もしない僕は、さぞ彼にとっては良いストレス発散の道具なのだろう。
「はー…殴った殴った。また頼むぜ、静夢。じゃ学校で」
なんて言っていたことを僕は気を失う直前に聞いた。

学校…なんて…行け…………る………か………

僕は学校にも行けずに、公園で倒れてしまった。



ミンミンミンミン…
僕は蝉の音で目を覚ました。
季節は夏。
真夏日が続く毎日に、街中が熱気に包まれている。
そんな中、公園の真ん中で倒れた僕は木陰で涼むように横になっていた。
「大丈夫…?」
ふと、声を掛けられる。
声の方を見ると女の人がいた。
顔が近い。
それもそのはず…僕はベンチで彼女の膝に頭を乗せていたのだ。
「あ……す、すすす…すみませんっ…大丈夫ですっ!」
「そう…良かった。でもびっくりしちゃった。倒れてる人がいるなーって思ったら、しーくんなんだもん」
「え……?」
彼女の顔をよく見る。
綺麗な女性だった。
髪がスラッと長く、触らなくてもサラサラしているのが分かる。
目もパチッと大きく、どこかのアイドルのようだった。
でも、僕を『しーくん』と呼び、なにしろその大きな瞳の色が蒼いのは昔から変わっていない。
「美空……ねぇ?」
「うん、久しぶり、しーくん。ダメだよ?水分はしっかり取らなきゃ?」

昔、身寄りのない僕は孤児院に住んでいた。
その時の僕は今の僕とは違い、ギラギラした目をしていたらしく、別の意味で友達なんてできていなかった。
そんな中、ある女の子だけが僕に近寄ってきた。
それが蒼空美空(アオゾラミク)だった。

「え…しーくん、いじめられてるの?あのしーくんが?」
「あの頃とは違うよ美空ねぇ……」
「そう…なんだ………ごめんね、なんて言ったら分からないけど…元気出して?こうして久しぶりに会えたんだから…ね?」
孤児院を先に出たのは美空ねぇだった。
どうやら子供が欲しい夫婦が孤児院を訪ね、その夫婦に選ばれたのが美空ねぇだったのだ。
その時、美空ねぇは10歳。僕は8歳だった。
「美空ねぇは…今…なにしてんの?」
「私?大学生だよ。しーくんは…その制服は御堂筋かな?」
「うん…。それにしても…この街にいたんだね?僕はもう一生会えないと思ってたよ」
「私も。なんか…昔に戻ったみたいね…」
美空ねぇはそう言うと携帯電話番号とメールアドレスを書いた紙を渡してくれた。
「さってとぉ…しーくんに会えたことだし。張り切って学校行こうっかな。あ…それ、私の連絡先だから」
「うん。また会ってくれるよね?」
「もちろん。今度は一緒にデートでもしましょ」
と言い残し、僕は美空ねぇと別れた。

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