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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 77

別に私が相手をして倒してしまっても良かったのだけれども、まだその時ではないとお兄様が言った。
私達の目的は魔法協会の中へと進み、アレを奪うだけ。
執行者はどうやら不在のようで、残るは綺羅綺羅世界が一番の障害なんだけど、私の槍術で一瞬で終わらせばいい。
周囲に転がってる「人だったもの」が使っていた槍を奪う。
エクシーヴァは壊してしまったのは、後になって後悔している。お兄様にも怒られた。
これだから規格外破壊なんて名前が付くわけだ。
まぁ、昔のことは振り返らない。
今は今の私がやれることをするだけ。
さて、それじゃあ中に入ろうかと思った時、また誰かが歩いてくる音がした。
「アリス・ヨルトセッドか?」
現れたのはスーツ姿の優男。
紳士のような気品が伺える。
そして、その中に秘めたる強さも感じられる。
私相手に、怯えていない。
「レディに名を聞く前に自分から名乗ったらどうですの?」
「これは失礼。私の名前はイクスだ。それで?君は?」
「私の名前はアリス。アリス・ヨルトセッドですわ。よろしくお願い致しますわ?」
淑女のようにスカートの端を持って会釈する。
常に行儀正しく、は、お兄様の教え。
ヨルトセッドは常に紳士、淑女であれ。
お父様とお母様の教えでもありますわ。
「アリス。悪いがここから先は立ち入り禁止だ。お引き返し願おう」
「あら?そうはいけませんわ。私の欲しいものはそちらにありますもの」
「何が、目的だ?」
「秘密、ですわ?」
「そうか……」
彼は諦めたかのようにネクタイを緩めた。
凄いかっこいい。
私には朝霧静夢という決めた人がいるにも関わらずクラっときてしまう。
「すまないが……ここは通せない」
「なら、押して通ります」
「規格外破壊、というやつか?」
「ええ。……それではいきますわ?」
一瞬にして距離をつめ、槍で突き刺す。
しかし、槍は彼に刺さらず、彼の目の前で「何か」に阻まれていた。
「無駄だ」
槍を引き、更に刺すこと計10回。
ある一定の場所から槍を突破させることができない。
まるで壁に槍を刺してるかのようだ。
「無駄だ」
「そのようですわね?防御魔法……しかもかなり強固な防御魔法をお持ちで」
「規格外破壊でも壊せないというのは光栄だな」
「ご冗談を。今は、試し、ですわ?」
「まだ上がある、と?」
「ええ」
槍を握る。
扱い慣れてない槍だが、そんなものは関係ない。
思い切り、私は槍をぶっ刺した。
ガキンッ!!
鈍い音と共に槍が壊れた。
「これが、本気か?」
その言葉に、少しプライドが傷付く。
もちろん本気ではない。
今のは私が悪いのではなく、槍が悪い。
「文句があるなら、槍に言ってもらいます?」
「槍は悪くない。自分の役割をこなしたまでだからな」
「槍には優しくて、女の子には厳しいのね?」
「普通の女性には優しいさ。でも君は、普通じゃない」
普通じゃない。
異常、とでも言いたいのだろうか。
結構、結構。
そこまで言うなら私も引き下がるわけにはいきませんわ。
「分かりました。こんなおもちゃではなく、本物を使いますわ?」
壊れた槍を投げ捨て、私は唱える。
さあさ、お出でなさい。
螺旋の夜、永久の暗黒、光無き楽園よ。
終末の予兆はここに、抗えぬ恐怖をここに。
輝きを失う現実と、堕ち続ける生命に祝福を。
闇の魔法は今より世界を塗り潰す。
「フィルデスペア」
じわり、と闇が私に纏う。
正直に言うと、私はこの魔法が嫌いだ。
何故なら、この魔法は「破壊」しか使い道がないからだ。
もう一度言う。
私はこの魔法が嫌いだ。
こんな魔法、なければ良かった。
「それが噂の闇の魔法か。思ったよりも、醜いな」
彼の言葉が私に突き刺さる。
それは、私が気にしていたことだ。
あの三姫のような綺麗な魔法ではない。
美しさの欠片もなく、あるのは残酷なまでの漆黒だけ。
そのせいで付けられた名は、闇の獣、だ。
姫とは真反対の位置にある。
私だって、姫だと言われたかった。
美しい魔法を使いたかった。
でも、この魔法は私を獣にする。
そして私はいつしか悟った。

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