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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 74

ソーサーのないカップをテーブルに置き、静かに座っているが、その眼は碧色に光り、怒りを灯していた。
「相手にまったくされなかったのよ。運命を掛けられたとはいえ、そこらの女性と同じように扱われ、褒められたのよ?綺麗だって……私を誰だと思ってるのよ。クドリャフカ・ユーフォリアよ?」
胸に手を当てこっちをジッと見つめてくる。
「私の身体はね、女の前に魔法使いとしてできてるのよ。クドリャフカ・ユーフォリアは女の前に魔法使いなの。その私がこんなにも自分のことを許せないのは初めてなのよ。敵を目の前にして棒立ち?哀れ過ぎて悲しむどころか笑えてくるわよ……まったくっ……何してきたのよ……今までっ……」
大粒の涙を流していた。
その翠色の瞳から、ポロポロと止まることなく、彼女の想いは溢れていた。
「私はこんなところで立ち止まれない。私が思い描いているクドリャフカ・ユーフォリアは、こんなところで立ち止まっていいように作られてないのよ」
その言葉は、私に深く刺さった。
彼女のあり方は、昔の自分に似ている。
昔、四大魔法のキャストホルダーになりたくて仕方なかった頃だ。
何回も挫折したが、憧れだけは捨てなかった。
その時の自分にオーバーラップしてしまい……いかんな、年寄りは涙脆くて。
こんな格好の悪いところは見せられん。
彼女が泣いているのだ、やることは決まっている。
そっとハンカチを渡す。
「その意気、気に入った。クーリャ、悲恋を君に教えよう」
「ふん……当たり前よ。そんなこと。私を誰だと思ってるのよ……」
彼女はハンカチを受け取りながら、精一杯のつよがりを言った。
そのつよがりさえ、今はもう可愛く思える。
私は、このクドリャフカ・ユーフォリアを気に入ってしまったようだ。
弟子一号がこの娘なら、悪くない。
この決断を後悔したのが、すぐ翌日だったというのは、また次の機会に話そう。


episode 33
「She is Dead -ナキヒト-」


「懐かしいなぁ、その名前……リオちゃん。仲良しだったんだけどなぁ」
まだベッドの上で療養中である美空は、懐かしそうにそう言った。
「でもなんで雅がその名前を知ってるの?」
「ホロウワールドに行ったのよ。この前。そこでリストを見つけてね?」
「どうなってた?」
「廃屋よ。荒らされてはなかったけど」
「へぇ……それで?リオちゃんが気になるの?」
「このリストを見て、一人だけ知らない名前があったから気になったのよ」
このリストは名前くらいは聞いたことがあるメンバーで埋め尽くされている。
しかし、ポツンとリオ・アリアナイトだけが、聞いたことのない名前だったからだ。
「そっか……うん、リオちゃんはね、亡くなってるんだ」
「な、亡くなってる……?」
「まだホロウワールドにいた時に。病気でね?」
「……それって、美空のいた時の話?」
「そう。ある日、それまで元気だったリオちゃんはいきなり吐血して倒れたの。そしてそのまま……」
「病名は?」
「そこまでは……教えられなかったわ。私も悲しくてそれどころじゃなかったし」
「そう……だよね……」
今の話を聞くと、目の前で吐血して倒れたということだ。
まだ幼い美空にとってはショッキングな場面だっただろう。
「残念ね?葉桜探偵さん?」
「探偵って何よ……別にそんなんじゃ」
「いやいや、まったく……あの雅がここまで強くなってお姉さんは嬉しいのです」
ニコッと笑顔で言われる。
彼女はいつもそうだ。
こんなに恥ずかしいことを笑顔で言う。
こちらが逆に恥ずかしくなるのだ。
「それよりも!じゃあリオ・アリアナイトはアッシュの計画には関わってないのね?」
「そうね。死者は蘇らないわ」
リオ・アリアナイトは病気で幼い頃に亡くなっている。
そのキーワードがアッシュまで続くかは分からないけど、病名くらいは知りたいわね……。
もう少し、調べてみるしかないか。
「うん。ところでアンタはいつまで寝てるのよ?」
「上司の命令で、もう少し療養しなさい、って」
「上司って?ワンちゃん?」
「ううん……雨さんよ」
青空美空、マーク・アイビセルダム、リルカ・ナインスに続く、最後の執行者。
天谷鳥雨(アマヤドリアメ)の名前は、きっとこの魔法世界で知らない人はいない。
だって彼女は、この世界で一番の治癒術師なのだから。
「それは絶対ね……ま、いい機会だからゆっくり休みなさい?私はもう行くから」
「暇だからまた来てね、雅」
「私が暇な時ね?それじゃ」
病室を後にする。
リオ・アリアナイトのことは一度保留にしよう。
それよりもこの絵本だ。
創造主、魔女……まだ知らないことばかりだ。
少しでも調べて、アッシュの目的を調べないと。
そう思っていた矢先。
ウィーン!ウィーン!ウィーン!
魔法教会中にサイレンが鳴り響いた。
「雅ちゃん!!」

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