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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 72

風景がそこだけ削り取られたかのように、彼女の色だけが残って、他には何も無く、ただ暗闇の中に彼女は立っていた。
小さい頃にこんな感覚はなかっただろうか。
押入れの奥、夜の廊下、真っ暗な帰り道。
そこに、なにかいるような、感覚。
真っ暗で、でも光を当てると何かいけないものを見てしまいそうで。
暗闇の気配に恐怖を感じたことはないだろうか?
アリスの周りにはそんなジトッとした嫌な空気が漂っていた。
私の蒼炎はその空間に入った瞬間に、「無くなった」。
見ているだけで足が震える。
本能がもうアレから逃げろと命じる。
正体を暴いてはいけないものがあった。
「ミク、貴女は殺してはいけないと言われてますわ。だから上手く防御してください。極力弱くしてさしあげますが、この魔法は良くて破壊、悪くて……何も無くなってしまいますもの」
黒い濁流が私へと向かってきた。
「(速い……!?)」
蒼炎をぶつけるも、その蒼は黒に塗り潰される。
その場から離れようとしたが、気付いたら片足がその闇に捕まっていた。
私はただただその暗闇に飲み込まれ、最後に聞いたのは自分の内側が壊れる音だった。


アリスとの戦いを私は病室のベッドの上で話した。
どうやら私は生きてるらしい。
いい治癒術師に身体を治してもらった。
と言っても絶対安静なのだけれども。
私は今の状況を聞き、その後に綺羅綺羅世界と雅は黙って私の話を聞いてくれた。
「なんにせよ、生きてて良かったわ美空ちゃん。どうして貴女を殺さずにという命令をアリスちゃんにしたのかは置いといて、本当に良かったわ……」
綺羅綺羅世界はぐずぐずに泣いている。
この人は本当に体当たりだ。
神ほどの強さもカリスマもない。なのに、みんなから慕われているには理由がある。
この人は暖かいのだ。
時に暑苦しいほどに。
「美空ちゃん、とりあえず何も考えずに、しばらくは自分の身体と精神(こころ)だけを考えて過ごしなさい?他の執行者には私から言っておくから」
「ありがとうございます、綺羅綺羅世界」
「じゃあ私はこれで。雅ちゃん、あまり美空ちゃんに無理させないこと。分かった?」
「分かってるって」
綺羅綺羅世界が病室から出て、雅と二人きりになる。
「………ごめんね」
「……謝らないで。また私は何もできなかった。アンタに一番辛いところを任せたの、私だし」
「それは違う。違うよ。私がアリスとやりたいって言ったんだから、雅のせいじゃない。……私達、まだまだ……でも雅はダブルマイスターになれたんでしょ?」
「お陰様で。アンタも早く追いつきなさい。アンタなら大丈夫だと思うから」
「ん、頑張るね。ありがと」
「じゃ、とりあえず今日は帰るわね。ゆっくり休みなさい」
雅も病室からいなくなり、急に1人になった。
少し、疲れた。
長く眠っていたからだろうか。
少し会話しただけなのに、疲れてしまった。
いろいろな話を聞いたからだろうか。
頭がパンクするとは言わないけど、情報量が多かった。
でも目標ははっきりした。
というか変わらなかった。
強くなること。
私はまだまだ弱い。
今のままだと、ただ周りの足を引っ張ってしまうだろう。
もっと強くならなければ。
彼を助けるためにも。
しかし、どう強くなれば?
ぐるぐると思考は尽きないが、そうしているうちに私は寝てしまった。
意識が混沌とする中、私は一つの疑問に辿り着いた。
なぜ、彼を助けたいのだろうか。
すると、瞳を紅くした私が現れて、こう行った。
ダッテ、彼ハ、私二近イ存在ダカラ。
それだけ言い、私の意識は混濁した。
紅い瞳だけがぼやっと、頭から離れなずに。  

episode 32
「pride  -ホコリ-」

私の名前はサイモン・エンドオール。
おや?聞いたことない?
……ああ、こっちのほうが馴染みがあるか。
私は、悲恋主義者(ハートブレイクプレゼンター)と呼ばれている。
元ダブルマイスターだ。
何故、「元」ダブルマイスターかって?
弱くなった?まさか!
あえて言わせてもらうが、逆に格上げになったのだ。
私の魔法「悲恋」が四大魔法の一つになったのだ。
それでダブルマイスターは辞退させてもらったのだよ。もうこれ以上はないからのう。
それでは僭越ながら紳士であることで巷を賑わせている私、悲恋主義者が四大魔法のことを君たちに教えてよう。
「前置きがウザいわね」
失礼、この小娘が失礼を。
いやはや私も困っているのだ。
四大魔法は秘匿や禁忌に近い存在だ。

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