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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 69

一瞬、頭の理解が追いつかなかったが、私にも分かった。
そして同時に彼も理解したらしい。
「ふぅん……そういうことか」
ようやく玩具箱が口を挟んだ。
「ま、どうでもいい。ターゲットが戻ってきたのは嬉しいし、どうせまた壊せばいい」
ニヤリと口角をあげる。
「もう一度いう。葉桜雅、僕のものにならないか?」
彼は手をこちらへと差し出した。
「ああ、それね。お断りさせてもらうわ?ガキの相手してるほど暇じゃないの私」
彼女は自信満々に、キッパリと断った。
「ガキじゃない。僕は立派な大人だ」
「だとしたら自覚したほうがいいわよ、自分は子供なんだって。そうね……貴方とお付き合いするよりは、綺羅綺羅世界のほうがまだマシよ」
「あはは!お前こそ頭がイカれてるんじゃないの?……いいよ、また壊してあげるから」
パンドラボックスが開く。
「リルカさん、ちょっと離れてて。今の私は加減が利かないかもだから」
「は、葉桜……お前、本当にダブルマイスターに……?」
「……うん、さっきね。母のようにとはいかないけども、自分なりに頑張ってみるから」
バチッと葉桜は雷化した。
言われた通りに離れる、か迷いどころだ。
ダブルマイスターになった、と彼女は言ったが、玩具箱に敵うかどうかは別。
それなら二人で倒しに行ったほうが、という考えがよぎった。
よぎったのだが、次の瞬間。
「昔のように……私はなんでも、できる」
彼女はそう呟き、消えた。
玩具箱もこれには驚いている。
確かに前より彼女の速度は速かった。
それこそ目に捉えることができないほど。
しかし、雷化した影響による雷光があるから、まだ追えたのだ。
だが、今のはなんだ。
家の灯りが消えるかのように、フッとその場からいなくなった。
まったくと言っていいほど分からなかった。
「パンドラボックぐあっ!?」
葉桜は、玩具箱を真正面から殴っていた。
なにかしようとしていた玩具箱は、何かする前に殴られた。
「遅い」
吹き飛んだ玩具箱に言い放ち。
彼女はまた消えた。
この速度は見たことがある。
昔、戦場にて、紫電の戦乙女が戦ってる時と瓜二つだ。
「う……ぐっ……なんなんだよ、ははは、いいじゃんいいじゃん、僕も久しぶりに本気を出しぐえっ!?」
「うるさいわよ」
また玩具箱は吹き飛ぶ。
彼はまるで彼女の速さについていけてない。
「はぁ……ぁ……キレた。もういい。ぶち壊す」
ようやく立ち上がると、彼はパクッとパンドラボックスに食べられたのだ。
途端、周りが真っ暗になる。
「空間魔法……?」
「厄介な……」
空間魔法は一部例外を除いて、基本的には術者が解くか、術者が死なない限り解けない。
だから巻き込まれた私と葉桜はもう逃げられない。
そして、空間魔法の中は、あるルールが適用される。
それが、今回一体どんなルールなのかは術者によって決まる。
真っ暗な空間にパッとスポットライトが当たる。
そこにはパンドラボックスがあった。
箱がぱかっと開く。
そこから、緑色の衣装をした玩具箱が出てくる。
「空間魔法、ネバーランド。もう大人は嫌いだ」
「ピーター・パン?さっきまでは子供じゃないと言っていたのに、もう言ってることが違うわよ?」
「いいよ、もう。嫌なことはみんな大人が悪い。みんなみんな大人が悪い。大人なんて死ねばいい」
玩具箱は携帯ゲーム機を取り出した。
電源を入れる素振りをして、空間魔法が始まる。
「ゲームスタート」
玩具箱がいなくなると同時に風景が変わる。
「ここは……魔法協会?」
魔法協会のロビーに変わる。
「いや、しかし……古い……?」
ここは、一昔前の魔法協会の様相になっていた。
「これは……大戦時代の……!?」
バチバチ!!と大気が震える。
葉桜もそれに気付いたらしい。
奥からとんでもない魔力が流れ込んできた。
カツン、カツン、と、それは近付いてくる。
「葉桜っ…構えろ!」
しかし彼女は構えずに惚けていた。
「葉桜っ!」
「おかあ……さん……」
「え………?」
耳を疑う。
しかし、私は遅れて気づくことになった。
奥から現れたのは、現役時代の、紫電の戦乙女・葉桜あやめだった。
「貴女達、誰?見ない顔だけど、どうやってここに入ったの?」
声もそのままに、姿もそのままに、紫電の戦乙女だった。
まずい!まずい、まずい!
頭の中のサイレンが鳴り響く。
「葉桜っ!騙されるな、玩具箱の魔法だ」
「なに?いきなり呼び捨て?」
「いや、貴女じゃなくっ!雅、おいっ、雅っ!」
ついつい私も貴女なんて言葉を使ってしまう。
味方としては心強い限りなのに、敵だとこうも恐ろしいとは。
今はあの偽物も心配だが、隣の葉桜雅も心配だ。
「雅っ!しっか……り……」
だが、それは杞憂だった。
隣にいる葉桜は、真っ直ぐに葉桜あやめを見つめていた。
「葉桜あやめさん」
「なによ?」
「一言だけ、言わせてください」
「ん?」

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