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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 68

幾多の魔法が、その箱に詰まっている。
例えば、体を透明にされたら私には手が出せない。
私の魔法には得手不得手がある。
結局、攻撃するのは私自身なのだから。
そんな私が今回、不得手な相手と戦うことになったのか。
それは、救護対象が、葉桜雅だったからである。
葉桜雅……そう……紫電の戦乙女の娘。
私はもう亡くなられた葉桜あやめさんに恩返しをしたかったのだ。
昔、私は戦場でまだまだひよっこ魔法剣士だった。
今のような魔法も使えず、ただ戦争という大きな歯車の一部として動いていた。
そこで、紫電の戦乙女に助けてもらったのだ。
私が敵にやられそうになった時に、彼女は颯爽に現れ、いつの間にか敵を倒していた。
まさに戦乙女。
いや、女神にも見えた。
そして、私に「危ないから逃げなきゃダメだよ?」と一言残し、次の敵へと向かっていった。
そんな彼女が亡くなったと聞いた時は、まさかと思った。
きっと私だけではないだろう。
魔法世界を揺るがすニュースだった。
そして今。
その娘が、玩具箱に捕まった。
私はいてもたってもいられなかった。
今こそ、私の成長した力を使うべきだ。
そう思って、今に至る。
私は見えない攻撃に、苦戦を強いられている。
それはきっと鋭利な刃物、おかげで身体は切り傷ばかりだ。
嫁入り前の身体になんてことをしてくれる。
切っ先が身体に当たった瞬間、9倍速で避けている、が、それも今、玩具箱が頭に血が上っているからだ。
私がこの攻撃に対して防戦を強いられていることに気付いたのか、彼は遊び始めた。
先程、散々怒らせたからか、今はきっと嬲り殺す快楽に身を任せてるのだろう。
おかげで一気にトドメを刺しにこない。
ゆっくりと、じっくりと攻められている。
服が斬られて大分セクシーになってるのは置いといて……さてどうしよう。
あちらの意図が分かるこちらは偉く冷静に、必死さを演じてる。
しかし、この状況は長く持たない。
玩具箱が飽きれば終わりだ。
一気に殺しに来るだろう。
「あはははは!すっごいエロいよ!あはははは!」
非常に楽しそうである。
防戦一方なのは確かだが、逃げることもできる。
逃げてもいいのだが、まだダメだ。
玩具箱は気付いてなさそうだが、先程奥で物凄い光を見た。
あの男女(綺羅綺羅世界)が何をやってるか分からないが、葉桜雅はまだ現実世界にいるようだ。
少なからず、彼女が撤退しきるまでは相手をしなければいけない。
こいつのターゲットはすっかり私に向けられているのなら尚更だ。
しかし、終わりは唐突だった。
「ハッハッハッ……はぁ……飽きたな」
「ああっ…っ……!?」
鋭利な刃物が二本に増えた。
結果、一本目を避けた先に二本目があり、私の太ももはザックリと貫通した。
切り落とされる前に身体を動かして刃物を抜く。
鮮血が足を伝う。
服を少し破り、急いで止血する。
応急処置をすると、私は急いで動き続けた。
痛い、が止まれない。
私の魔法は、例え全身麻痺している状態でも無理やり動かすことができる。
だから足に怪我を負っても関係はない。
身体へのダメージを無視したら、の前提だが。
ついに玩具箱の興味が消えた。
こうなったら止まることは許されない。
常に9倍速で動き続けなければならない。
「確かに速い……が……悪いけど、それはもう慣れた」
私の9倍速に慣れた!?
いくらなんでも早過ぎる。
「どれだけ早かろうが、それより早いモノを出せばいいだけだ。それに、さっきまで葉桜雅と戦ってたんだ。さすがに慣れる」
「ちっ……冷めるのが早いわね…」
「はぁ……失敗した。熱くなりすぎた。ムカつくからお前死ねよ」
唐突で、残酷な死が近付く。

しかし、訪れたのは死ではなく、
落雷だった。

デジャヴだった。
いつしか見た光景とそっくりだった。
落雷は私の目の前に落ちてきた。
菫(すみれ)色の閃光と共に現れたのは、紫電の戦乙女そのものだった。
「いたた、まだ慣れないなぁ……加減ができないというか、なんというか……リルカさん、間に合った!良かった!」
「葉桜……雅…」
「足がっ!ごめんなさいっ、遅くなってっ……」
一瞬、惚けてしまう。
しかし、自分の役割を思い出す。
「ば、馬鹿!何故戻ってきた!あの男女は何をやっている!?」
彼女は怒る私の顔の前にバッと手のひらを向けた。
「ワンちゃんのことは責めないで。それに私は戻ってきたわけじゃない」
私に微笑みかけた後、彼女はキッと玩具箱を睨む。
「あいつを倒しに来た」
「倒しにって……葉桜、お前の敵う相手ではないことは…!
「大丈夫!やらせて!ダブルマイスターはダブルマイスターが倒す」
ダブルマイスター……?

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