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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 61

まるで水風船が何個も浮いてるかのような光景だった。
「ただの水、じゃないわよね?」
「ただの水さ、H2O」
と嘘をつく。
しかし、液体であることがまず一つの鍵である。
液体はいくら斬っても斬れないものだからだ。
「嘘つきね?」
「生きる術だよ」
液体の球を彼女に向かって飛ばす。
彼女はそれを斬ろうとせずに避ける、が、忘れては困る。
パンドラボックスから出たものは自由自在なのだ。
球体のそれはカクンとベクトルを90度曲げる。
当たった、と思ったが彼女は更に身を翻した。
そしてまた球が自分の方向へと向かう前に、その球に対して自分の上着をぶつけた。
その瞬間、球が弾け飛ぶと同時にジュワッと音をたてて、彼女の上着は焼け焦げた。
彼女の判断は素晴らしかった。
さすが執行者、場数が違うからか、そういうものへの対処が分かっている。
「趣味が悪いわね。この液体は硫酸ね?」
「そう、その液体の正体は硫酸。正確に言うと濃硫酸だ。当たると確実に火傷するよ」
「そうね。…でもね?いいのかしら?」
「なにがだ?」
「液体が斬れないことは分かってるわ。無駄なことはしない。だからこそ私は、貴方を斬りにいくけど」
ビリビリと殺気が俺に向けられる。
全身の水分が蒸発するのではないかと錯覚するほどに。
このダブルマイスターの俺が、圧倒させられている。
「全身を火傷してでも私は貴方を殺す。それが執行者の仕事だもの」
この女、どこまでっ…!
「そしてもう一つ、悪いニュースを教えてあげる」
「悪いニュース…?」
「私との闘いに熱くなり過ぎたようね。うちのお姫様は返してもらったわ?」
ふと、後ろを見ると。
さっきまで生気を失い倒れていた葉桜雅の姿は無かった。
「……った」
「はい?」
「どこにやったと聞いているぅぅ!!」
「教えてあげない」
「貴様を殺すッ!!」



ふと、気付いたら真っ白な空間にいた。
「ねぇ!」
声を掛けられた。
目の前を見ると、小さい私がいた。
「お姉ちゃん、誰?」
「私…?葉桜…雅」
「すごーい!私と同じ名前だ!」
キャッキャと嬉しそうに少女は飛び跳ねた。
「じゃあお姉ちゃんも紫色の雷出せるの?」
「え…う、うん…ほら」
バチバチと紫電を出す。
しかし、少女はそれを見ると悲しそうな表情をした。
「あ、あれ?どうしたの?」
「よわい」
「え…?」
「お姉ちゃんの雷はよわいね。今にも消えそう。紫電はね、こう出すの」
バチバチッと少女も紫電を出した。
それは私のそれと違い、力強く、明るく、神秘的だった。
私の紫電は、まるで今にも消えそうな線香花火だ。
「お母さんの紫電に似てる…」
「うん!雅のお母さんも紫電を出すから、雅は真似したの!ほら!すぐ出来るようになったの、凄いでしょ!」
少女は無邪気に、そして私にとっては残酷なほどに母と同じような紫電を出していく。

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