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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 45

「反転、させてるのよ」
「反転だと?」
「ええ。全ては逆に反転する。プラスはマイナスに。強は弱に。速ければ速いほどにこの世界だと遅くなり、魔法に強ければ強くなるほどに弱くなる」
それでは、なんだ…この世界にいる限り…私はこの小娘に勝てないということか!!
「現実で勝てる敵は現実で勝てばいい。現実で勝てない敵は…ここで勝てばいい。ティアーオブクイーン、レベルツー…『絶対反転世界(アブソリュートリバーサルワールド)』。さてと…まだ続ける?番犬さん?」
小娘は小悪魔のように笑う。
眼は緑、纏うオーラは黄金。
そうであった、いつしか聞いたことがあった。
最年少でティアーオブクイーンを発現した少女は、ティアーオブクイーンの新たなる扉を開け、そのままダブルマイスターとなったと。
その名はクドリャフカ・ユーフォリア。
白金の姫。
もはやそのカラーリングは彼女が得意とする水ではなく、彼女な眼の魔法における世界と彼女自身の色となっていた。
「跪きなさい、崇めなさい、そして私に恋しなさい?全ての男は私に魅了される運命にあるべきだわ?」
ビシッと仁王立ちする姿は既に妃の振る舞いだった。
この戦いはもうワンサイドゲーム。
番犬は静かに三つの頭を垂れたのであった。


時、遡る。
単刀直入に言えば、朝霧静夢は誘拐されたのである。
デイオブアイマが起こって一週間もせずに、ある少女が魔法教会へと入り、ことごとく全てを破壊し尽くし、朝霧静夢を拐っていった。
朝霧静夢は記憶をなくしてるとはいえ、いまだこの世界のキーパーソン。すぐに救助隊が組まれた。
しかし、その救助隊は番犬と呼ばれる巨人に全滅。
またもなお救助隊が組まれる。
番犬を陽動し、速やかに朝霧静夢を助ける作戦が組まれた。
しかし、それも魔法兵隊に阻まれる。
魔法教会は手も足も出なかったのだった。


―ちなみにだが、神はデイオブアイマ後に、時として朝霧静夢が誘拐された直後に行方不明。
今は事実上、綺羅綺羅世界がその役をこなしている。
しかし、実戦向きではない綺羅綺羅世界は戦地に赴くことができなかった。
また、三姫はというと、朝霧静夢を拐った少女に瀕死の状態にされた。
ことごとく魔法は敗れ、誰一人少女に傷ひとつ付けることもできず、圧倒的な力の差に蹂躙され、目の前で朝霧静夢を誘拐されたのである。
精神的なショックが大きかったためか、三姫とも肉体的には回復したいても、しばらく病院のベッドから目覚めることはなかった。
目覚めてからは三姫とも、朝霧静夢を取り戻すため、それぞれで魔法の鍛練を始めたのだ。
元々才能があるせいか目を張るような成長を遂げたのだ。
そして、現在―
鍛練を始めてから2年の時が過ぎた。
三姫も心身ともに成長し、ようやくここまできたのだ。


「よしっ!着地成功!」
着地は成功。
遥か上空からの落雷は朝霧静夢の目の前ドンピシャだった。
クーリャに連絡する。
静夢に迂闊に触れると番犬が私を殺しにくる。
それを食い止めるのは今回はクーリャの役割。
私は連絡を入れた後に静夢を見た。
この姿を見たのは2回目。
1回目は写真で。
そして今回、実際に見てみると痛々しくて見てられなくなる。
手と足、首に枷が付けられ、椅子に座ったままグッタリとしている。
全身は痩せこけ、食事も満足に食べてないのが窺える。
そのわりに服だけは上下とも新品のような真っ白な服を着ている。
私は最初にこの姿を見たときに、着せ替え人形を想像した。
もはや声すら出ず、虚ろな目はいつも遠いどこかを見ている。
「静夢…?」
「…………………」
答えが返ってくるとは思わなかった。
でも声を掛けずにはいられなかった。
この姿にしてしまったのが自分が弱かったせいだと思うと苛立ちを通り越して泣きそうになる。

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