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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 44

後は避けるだけの単純作業。

しかし、ふと、番犬の姿が消えた。

空白の一瞬が、死を直感させる。
私は瞬時に液化するように、地面に水びだしのようになった。
そして、果たして何秒、いや何コンマの間があったろうか。
番犬の豪腕が私のいた場所を横に空振った。
液化からすぐに番犬から離れるように動く。
今はとりあえず動け!
止まっている暇なんてない!

番犬、最後の顔。
『疾風』
すべての思考を、己の身体で遅らせる。
こちらに考える暇さえも与えないほどの高速移動。
疾風で動き、破魔で封じ、剛力で殺す。
これがこの番犬の3つの能力。
ケロベロスの名は、決して容易いものではない。

離れるように移動してもなお、後ろをとられるという不思議な感覚である。
速さだけでいうのならば雅と同等かあるいはというところ。
今の私は番犬の姿が消えたら、ランダムに移動しているだけだ。
それも徐々に厳しくなってきている。
私の水の膜は入口と出口に出来る。
入口はもう移動した後に破魔されても大丈夫。
だが問題は出口だ。
徐々に番犬が出口を見つける速度が速くなってきている。
これではあと十数手で詰みになりそうだ。
「あああぁぁぁぁ!」
番犬が吠える。
疾風怒濤とはこういうことを言うのだろうか。
魔法の連続使用と、思考より直感の戦いに頭がおかしくなりそうだ。
「るあぁ!」
「!?」
今のは危なかった。
本当にギリギリで避けた。
もうこの水の膜連続移動も限界らしい。
私は最後の移動で空に移動した。
ミヤビほどではないが十分高度はある。
重力に引かれ、地上へと落ちていく。
地上では番犬が腰を低くし、まるで草食獣を狩る肉食獣のように息を潜めている。
空から落ちる私が移動した瞬間に水の膜の出口を叩けるように。
これで終わりだ、と番犬の声なき声が聞こえる。
ふん、十分時間は稼いだわよねミヤビ?
それじゃあそろそろカーテンフォール。
最後は最初の姫…クドリャフカ・ユーフォリア、白金の姫(プラチナプリンセス)の神秘をご覧あれ。


最初はただの小石かと思った。
するとその小娘のせいで朝霧静夢を逃がしてしまうことになった。
ただ疾風で追えばまだ間に合うと判断し、その小娘を殺すことにした。
しかし、その小娘もなかなかにうっとおしい。
だが、もう捉える。
小娘のよく分からない白い壁のワープも、慣れてしまった。
次は必ず出口を叩き、あの小娘を殺す。
腰を低くし、身体を縮ませる。
要はバネの伸び縮みだ。
伸びる前に縮む。
一瞬であの小娘の殺せるよう。
あの小娘はあろうことか空へ移動し、落ちてきた。
馬鹿め、地上ならともかく空中ならば白い壁の移動を使わらなければならない。
出てきたところを叩く。
ただそれだけ。
「馬鹿な娘だ」
「ふっ、馬鹿は貴方よ」
小娘の眼が翡翠に輝く。
その輝きは辺りを緑色に照らすほど煌々と輝いている。
「ティアーオブクイーン、レベルツー!」
小娘の眼から魔方陣が呼び起こされた。
その魔方陣は高速に回転した後、カチリとまるで時刻を合わせたかのように止まった。

途端、景色が変わった。

先程までは空は満天の星、地上は草原が広がっていた。
しかし、今となっては、ただ白い空間が広がっている。
自分には破魔、加えて疾風も剛力もある。
たが、この不思議な空間にいきなり放り込まれたらさすがに驚きはする。
「さすがにこれは無効にできないようね」
そこには黄金に輝く小娘がいた。
「なにをした小娘?」
「閉じ込めたのよ。貴方を私の檻に」
その檻という言葉に腹立たしさを感じる。
檻というものは本来、獲物を逃がさないように、箱状の中に入れて閉じ込めることを言う。
そういう自分も今まで檻という檻に閉じ込められたことは何度もある。
ただ、そのどれも突破してきた。
しかし、この空間はなんだ。
この空間のどこが檻なのだ。
「がははははははは!!」
笑わせる。あろうことか私はひとつも自由を奪われていない。
「笑止!今すぐ元の世界に戻らせてもらう!」
全身を脈動させる。
全身のバネを思いきり伸縮させる。
「!?」
ここで自分自身の違和感に気付く。
疾風で移動してるにも関わらず、自分の動きはひどく鈍いものになっていた。
ようやく小娘の目の前に辿り着き、破魔と剛力で小娘を叩き潰そうとした。
しかし降り下ろした拳は、小娘が振り上げた右手で止められた。
「なん、だと…?」
私の剛力がたかが小娘の右手に負けただと!?
「気付いたかしら?」
小娘の声が混乱した頭に刺さる。
「もう一度言う。小娘、貴様なにをした…?」
ニヤリと小娘は笑う。
腰に手を当て、黄金に輝くその姿は一国の王女とも見れた。

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