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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 40

「振動は止まったかもしれないけど、シズムを探すのは止めないわよ?」
足を止める雅にクーリャが捜索を促した。
でも同じく私も足を止めていたのだ。
「ほら、美空もっ!?」
クーリャも、更には雅も気付いたらしい。
朝霧静夢を発見したのだ。
「しーくん!」
駆け寄った。
いの一番に駆け寄った。
それはただ彼の無事を早く確認したかったからだけかもしれない。
ただ、その異変に真っ先に気付いたのも私だったのだ。
しかし、その手にアイマらしき本を抱き締めながらこう言ったのだ。
「………どなたですか?」


気が付くと、僕は知らないところにいた。
あれ?その前に僕は誰なんだろう。
よく………分からない。
怖い…。
なにか、大切なものを、なくした気がする。
それにしても、この白い本はなんだろう。
シズ…ム…?
本のタイトルを読んだ瞬間、頭が少し痛くなった。
なんでだろう。
本をめくってみる。
何も、書かれていない。
見事に真っ白である。
お絵描き帳、みたいなやつだろうか。
本を閉じ、周りを見てみる。
本当に何も覚えていない。
なんなんだろう。
どうすればいいんだろう。
急に不安になる。
どうしよう、僕には、何もない。
「しーくん!?」
ふいに、声が聞こえた。
女の人が3人、僕に駆け寄ってくる。
分からない、分からない、分からない。
3人とも分からなかった。
だから僕はこう聞いたんだ。
「………どなたですか?」
そう言うと3人とも同じように驚いた顔をした。
「馬鹿じゃないの!?」
「でも、雅…ちょっと待って…」
「………魔力が…なくなってるわね…」
「嘘…使い果たしたんでしょ!?」
「ううん…今度は封印とかじゃなくて…本当に…もう魔力を生むこともできなくなってる」
3人の顔が歪む。
なにか悪いことでもしてしまったのだろうか。
「とりあえず…一緒に来てもらってもいいかな?」
髪の長い女の人に手を差し出された。
ぽーっと、その青い瞳に引き込まれそうになりながらもその手を握った。
なんとなくだが、この人は知ってる人というのが分かった気がした。




のちにこの日はデイオブアイマと語り継がれた。
魔法世界崩壊による死者は多数、また魔法世界の人達の3割の人間が魔法を失うことになった。
シズムという本は世界の修復と、新しい世界の仕組み作りに魔法世界の人間の魔力を使ったのだ。
アイマとは違い、魔力のローンを払い続けるのではなく、一括で魔力を消費させ世界を存続させることにした。
もちろんこの事実を知るのは魔法協会の中でも数少ない人間のみである。
新しくできたシズムという本は単独で魔法世界を存続させるものになり、アイマとは違い人々の過去、はたまた未来が書かれることはなかった。
というより、何も書かれていないのだ。
全てが書かれていたとはアイマとは違い、何も書かれていないシズム。
その違いが分かるものは結局誰一人としていなかったのだ。
かくして魔法世界は崩壊することはなかった。
魔法世界を崩壊に導いた狂血鬼は再度神によって更迭された。
他の悲恋主義者、玩具箱、電波妖精、悪夢蘇生はその姿を消したらしい。
捜索は続けられているが、まず見つけるのは難しいだろう。
神は相変わらず魔法協会の中で働いているのかサボっているのか分からず、綺羅綺羅世界はその能力からか魔法協会にずっと常駐で生活している。
あの狂血鬼を拘束してるのも綺羅綺羅世界が作ったものだという。
魔力を封じる拘束というものだ。
そして、孤独迷子。
世間一般的には彼は英雄とされた。
魔法世界の崩壊を止めるために、自分の命を犠牲にしたと。
だが実際はそうじゃない。
確かに心はシズムという本に奪われた。
しかし体は存在していた。
彼は記憶をなくした状態で発見されたのだ。

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