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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 37

この世界の人間によって、作られている?
未来は偽物、永遠に得られない?
やっぱり、この本は物語の本ではなくて、この世界を作ってる本なのでは?
「悪夢蘇生、最初の、そのページだけでもいい…僕にくれないか?」
「面倒」
「これで最後だ」
悪夢蘇生は最初のページだけを破り、僕にヒラヒラと見せつけた。
ワールドイズマインでそれを奪い取り、この世界の原初に触れる。
「……いや、ダメだ…壊れる…」
「ん?」
「だから神はっ!魔法世界が…壊れる…!」
「だから、それで本当の自由な世界になるんでしょ?」
「違う…この魔法世界自体が壊れる」
「ふーん…なんか面白そうじゃん?」
「ダメだ、アイマは壊しちゃダメだ」
「なによ?言ってること違うけど?さっきので最後でしょ?」
「いいか悪夢蘇生?この本の魔法は特別すぎる。正直言うと壊すとか壊さないとかではなく、触れてはダメだ」
「ふーん…でも壊すよ、私は」
「悪夢蘇生っ!」
「残念ね、さようなら孤独迷子。あなたに邪魔されないよに別の場所に移動するわ」
僕がワールドイズマインをする間もなく、悪夢蘇生は死んで生き返ったのか、既にアイマと共にいなくなっていた。
「まずい…くそっ、神はこれを知ってたのか?」
ワールドイズマインで戻る。
ワンダーちゃんとクーリャはもういなかった。
雅と美空ねぇの部屋に行っても二人はいなかった。
まるで僕は迷子みたいだ。
僕だけがこの世界のからくりに気付き、でもどうしようもなく一人なのだ。

どれくらい走ったのだろうか。
誰一人、見つけることもできずに僕は疲れはて立ち尽くしていた。
「もう、世界は壊れてきているのか…」

この魔法世界の真実。
アイマの最初のページに記されていた、魔法世界の特記事項。
そもそもこの魔法世界は最初からあったものではなく、現実世界にいた魔法使いが、何らかの理由で新しく作った世界だ。
しかし、世界を作るという魔法はとても一人ではできない大魔法だ。
だから、その魔法使いが作ったのは、魔法世界を保つ仕組み。
この魔法世界の人間全てを巻き込んだ壮大な計画。
それはこの魔法世界にいる人達全てから魔力を少しずつもらい、魔法世界を保つという仕組みだった。
だが世界と、人間を繋ぐものが必要だった。
それがアイマなのだ。
アイマは世界の人達の生活を記録するものとして作られた本だった。
同時にアイマはその記録を『詠唱』することで今の世界を保っていた。
言うならば、今この瞬間は、これまでの過去を『詠唱』したからこそある今なのだ。
アイマはリアルタイムで書き、唱えることで魔法世界を保ってきた。
しかし、そこでまたも問題が発生した。
あまりにも大きな魔法が一人歩きを始めたのだ。
アイマ自体が過去ではなく未来にも目を向け始めた。
魔法使いの減少により、唱えるスピードよりも書くスピードが早くなりすぎてしまい、未来までも書いてしまったのだ。
人々の未来までも記録し始めたアイマはもう誰にも止めることができなかった。
それは誰にも触ることができない、魔法世界の根幹の方程式。
それがこの魔法世界とアイマの真実。
そして、今おそらくアイマは破壊された。
そうなると世界は人々とのリンクが切られ、魔力供給源がなくなった。
詠唱ができなくなった世界は、魔法世界を保つことができない。
つまり、この魔法世界は崩壊する。
「崩壊が始まった」
地震のように世界が揺れ始めた。
「ワールドイズマイン…」
そして、世界の崩壊―いや、厳密に言うとアイマの破壊により、
僕の魔法も消えてなくなった。

「ねぇ」
ふいに声をかけられた。
その方向を見ると、一人の女の子が立っていた。
魔法世界の人間は全員いなくなってしまったと思っていたが、ようやく人に会えたことに泣きそうになった。
「お兄ちゃん、朝霧静夢だよね?」
きっと僕は目を見開いたに違いない。
初めてあった女の子に、名前を呼ばれたのだ。
「君は?」
「私?朝霧愛真」
「朝霧…あいま…?」
「そう。よく知ってるでしょ?アイマ、あの白い本が私。魔法世界の創設者に選ばれた子」
えへへ、と笑う女の子はそのあどけない表情を僕に向けた。
「え…あ…」
「ま、混乱するのも分かるけどね?さてと、時間はあまり残されてないの。今ほんのちょっとだけ私の力で崩壊を止めてるけど、それまでに君に話すことがあるの」
彼女の表情が真剣さと切迫さを物語っていたので、僕は黙って頷いた。

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