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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 29

クレスは教会の十字架を見つめていた。
「世界?世界って…魔法世界のことか?」
「ああ、魔法世界だ。現実世界とは違い、魔法に満ち溢れた世界。そして、決められた世界」
クレスは微妙なニュアンスで世界を表した。
「決められた世界って…なんだよ?」
「文字通りだ。信じられないかもしれんが、この魔法世界は一つの本によって出来ている」
本…?
本って…あの本…?
「名を『アイマ』という。この魔法世界を作ったと言われる神様の名前だ。魔法世界の全ての出来事は、その『アイマ』に記されている」
正直、クレスが何を話しているのかまったく分からず、更に言えば彼のお得意の冗談だと思っていた。
しかし、彼の表情は真剣そのもので、笑い飛ばせる雰囲気ではなかった。
「笑えるよな?俺がこうして話してることでさえ、その『アイマ』に書いてある。全部だ」
「そんなことが…あるのか…」
「あるんだよ。さてと、ここからが本題だ。俺はその『アイマ』をぶっ壊そうと思っている。自由になりてぇ。そんなレールをなぞるだけの人生なんざ、クソ喰らえ、だ。そこで…一緒に来ないか、シズム…俺と…。お前が入れば、百人力だ」
「その『アイマ』を壊すとどうなるんだ…?それほどのものだ…世界はどうなるんだ?」
「世界は自由になる」
「嘘だ。クレス、なにか俺に隠してないか?」
睨み合うこと数秒、クレスは手をあげてこう言った。
「分かったよ…魔法世界は一度壊れる。世界が壊れんだからな、人も壊れる。そうしたら?残るのは無秩序だ。ありとあらゆる人間の欲が剥き出しになる。犯罪で世界は染まるだろうな?この、魔法世界はイカれる」
「大変じゃないか…」
「知ったこっちゃない。俺は元々イカれちまってる。シズムもその時は現実世界に戻してやるよ」
教会内が静まる。
この男の大それた計画に沈黙せずにはいられないように。
クク、と微笑みながらもその笑顔は狂ってる。
そうだ、そういえばそうだった。
こいつは危ない方のダブルマイスター。
あるひとつの村を一夜にして壊し、そこにいた全ての人の血を我が物にしたダブルマイスター。
狂血鬼、バーサーカーバンパイア。
僕は、こいつを止めなければいけない。
「させない」
「クク、やっぱりそうか。シズムを仲間にしたら楽勝だったんだけどな…その魔法さえあればな」
「知ってるのか?」
「ああ、ワールドイズマインとワールドエンド…どちらも『アイマ』を加筆修正する魔法だからな」
「そう…なのか?」
「というか知らないで使ってんのかよ。『アイマ』にはな、魔法の何から何まで書いてある。それを書き換えるのがワールドイズマイン。ある項目を全消去するのがワールドエンド。お前、黒崎赤音を全消去しただろ?」
ワールドエンド、という魔法はクレスの言う通り『対象の未来を消す』魔法である。
あまりにも危険過ぎで、まるで神様のような魔法である。
だから僕は使わなかった、使ってはいけないと思っていた。
「はぁ…交渉決裂な。じゃあ俺らは敵同士だ」
「僕を殺すのか?」
「いや?俺の目的は『アイマ』の破壊だ。ただ…邪魔するなら容赦はしない。今のところシズムと戦う理由はこちらにはない。だが、お前には『アイマ』関係なく俺を殺す理由がある」
ニヤリ、とクレスは笑う。
その笑みは今までで一番嫌らしく、気持ち悪かった。
「どういうことだ?」
「お前は無知だってことだよ。アサギリシズム。俺はお前のことは実は昔から知ってるんだよ」
「え………」
「村を一つぶっ壊したことがある。皆殺しした。一人を除いてな」
ぞわり、と悪寒のような痺れが背中を走る。
先程まで聞こえていた外の風の音も、鳥の声も聞こえない。
ただ、目の前の吸血鬼の言葉に全力を注ぐ。
「アサギリシズム、を除いてな」
グキッ!!
気がつくと全力でクレスを殴っていた。
「いいパンチだ」
しかし、クレスはのけぞりもせずに静かな顔でいた。
「お前がっ、父さんや母さんをっ!!」
「ふっ、ようやく…面白くなってきたなぁオイ!!」
クレスは僕を片手ではねのけるようにぶっ飛ばした。
「ぐっ…!うああああっ!」
パワーが違うのはご愛敬。

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