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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 23

聞いた僕が馬鹿だった!
人間じゃないんだ!
ビックリ吸血鬼だった!
「う…これはピンチだな」
「短い付き合いだったな」
「まだだよ!」
ワールドイズマインは使えない。
相変わらず魔力さえも溜まってはいない。
どうするか。
いや、正直どうしようもできない。
「くっ…なんていう場所だよ…!」
タイムリミットが分からない恐怖が僕を包む。
「ふふ…ふははは!泣け、叫べ!貴様の最期を俺は聞き留めよう!!」
「くっそぉぉぉお!!」

―3時間後
「………………………」
「………………………」
「…もうとっくに日は落ちたよね」
「そうだな…」
「なんで嘘つくの?」
「すまん」
返せ!
3時間前の俺のエネルギーを返せ!
「いやいや、なんかこう…よく分からんのだが、シズムは苛めたくなるというか…」
「えー…小学生じゃないし、僕男だし」
「リコーダー舐めさせろよー」
変態だ!
「ふむ…俺もこんなに一個人に興味を持つのは久方ぶりだからな。恋かどうかは分からんが、俺はお前が好きらしい」
「いや、恋はやめてよね」
「しかし、本当に久しぶりだ。こんな愉快なのは。どうだシズム?俺と一緒に来ないか?」
僕はこの問いかけを別の形で聞くことになる。
その時にはもう、後戻りはできなかったのである。


episode 15
「Last princess -サイゴノオヒメサマ-」


「どうだシズム?俺と一緒に来ないか?」
ドガァァァァァン!!
突如、轟音が僕の耳を貫く。
音の方を見ると、僕の牢屋の壁が破壊されていた。
「なんだっ!?クレスか!?」
「俺じゃねぇよ!!しかし、これはたまげたもんだ」
崩れた壁の山の頂上に人影があった。
「貴方がアサギリシズムね?冴えない男そうなのに、ミヤビもミクも物好きね…」
月光を背にしているせいか、僕はよく彼女を視認できなかった。
ただ、髪はツインテールでそれは腰までの長さがある。
それに何故かフリフリとしたお嬢様のような服を着ていて、逆光のうえでもなお、彼女の瞳は神々しく碧(みどり)に光っていた。
「美しい」
クレスも見えているのか、ぽつりと呟く。
彼女が段々と僕に近づけば、クレスの言った通りということが分かる。
ツインテールは月光を浴び、金色に輝いていた。
全体的に白い服が、白い肌との境界線を曖昧にさせドキッとした。
それに、碧眼を輝かせているその顔は文句なしに可愛かった。
「よろしく、シズム。貴方にとっての最後の姫、クドリャフカ・ユーフォリアよ。私が助けにきたんだから、世界の果てまで逃げる覚悟はできてるわよね?」
「クドリャフカ…ユーフォリア…?」
「ええ、親しみを込めてクーリャと呼ぶことを許してあげる」
「クーリャ…君は…」
「ごめん、説明は後で。じゃあその拘束具を壊すから」
と言うと、彼女は僕の拘束具に手を当てた。
「あ。動かないでね?腕が落ちるわよ」
「え」
シュウウウッ!!
音は一瞬。
その一瞬の『水飛沫』のあと、僕を縛り付けていた拘束具はバラバラとなった。
久しぶりに体を動かすことができて、フラフラする。
「…水?」
「そう…私は水を使うの。冷たいのは我慢して?あと、走れる?説明は道中してあげる」
足に力を入れられることを確認すれば、力強く頷く。
「うん、じゃあこっちよ!」
壁の外へと出る。
すっかり夜だと言うのに、月明かりがとても明るかった。
走る。クーリャがどちらに向かってるのかも分からないが、ただただ走った。
後ろでは脱走者が出たからかサイレンが鳴り響いている。
「クーリャ!君はいったい何故僕を助けたんだ!?」
「ある人に頼まれたからよ!」
「ある人って?」
「それは言えないのよ!ごめんね!でもね!ちょっと魔法教会に喧嘩を売るってのがやってみたかったのよ!」
「魔法教会って!?」
「えー…と、政府みたいなところ?」
うわ、僕そんなところに捕まってたのか。
というかこの娘は嬉々として喧嘩売ったのか。


広場に出る。
そこには走ってきた僕とクーリャを待ち受けるかのように黒崎赤音がいた。
「どうする?」
「ちっ……マスターオブマスター……」
クーリャが彼女のもうひとつの名を呼ぶ。
そこで理解した。

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