マジカルガールロンリーボーイ 22
しかし、反応があるのは嬉しかった。
「あ、あの…すみません。ちょっと教えて欲しいんですけど…」
「うるっせぇ!!お前に教えることなんてねぇよ!!黙ってろ!!」
凄い怒られた。
しかし、こちらも引き下がるわけにはいかない。
「すみません、ちょっと教えて欲しいんですけど…」
「なんなんだお前は!うるせぇ、とにかくうるせぇ!前隣に住んでいたクリスおばさんよりうるせぇ!」
いや、それは知らないけども。
「あの、これってトイレどうするんですか?」
「はぁ?何言ってんだ?んなもん我慢しろよ」
「ずっと!?」
「あったりめーよ。俺なんかもう何年も出してねーよ!」
人間じゃねぇ!
なんかこの人と話すと疲れる。
ひとつひとつ常識が壊れるとともに、僕のツッコミが上手くなりそうだ。
「というか貴方も捕まってるんですか?」
「あん?ということはお前もか?」
「はい、さっき…」
「なんだよー新入りかよー。それならそう言えよー」
やたらフランクだなこの人。
「えーと僕の名前は…」
「やめろ!聞きたくねぇ!」
「え、なんでですか?」
「んー、すぐ死ぬだろお前?」
「え?」
「あぁ、いやすぐ死ぬと思うぜ?今までのやつはすぐ死んだ。俺はここに入ってもう10年だが、それなりの魔力を感じた奴もいたが死んだ。それに比べて今のお前は欠片ほどの魔力も感じねぇ。諦めな?」
驚愕の言葉を浴びせられる。
そんな先人達がダメならば僕なんて一番ダメじゃないか。
「それは…また…困ったな…」
「呑気な奴だな…」
「ところで貴方の名前は教えてくれるんですか?」
「は…俺?ふん…俺の名前はクレスレッド・アークラード。世間一般に『狂血鬼』と呼ばれている。ダブルマイスターだぜ?すげぇだろ?怖いだろ?」
うわぁ……最悪だぁ…。
本当に人間じゃなかった。
ちょっといい人かもと思ったのに!
「ふははは!怖いか!?声もでないくらいか!」
どうしよう、もう関わりたくない。
今僕の中でダントツ一番に関わりたくない。
この状況でもう一言も喋りたくない。
が、何も喋らないのも逆に興味を引きそうだ。
最低限の言葉でもう関わることをやめるには…
「ふふふ…まぁ泣く子も黙るからな」
「あの」
「お?」
「僕もう寝るんで、おやすみなさい」
「よい夢を」
いい人だった。
とにもかくにも拘束されて5時間が経過。
退屈というのは人の感覚を麻痺させるものらしく、僕はあろうことか狂血鬼ークレスレッド・アークラードと話し込んでしまっていた。
「シズムー?お前はなんでここに入ったの?」
「いや、それが僕もよく分からないんだ…ただ僕は危険な人物らしい」
「は?お前が?誰かと間違えられてるんじゃねぇ?」
「僕もそう思いたいよ。ところでクレスは?」
「俺か?んー…記憶にないのだが、俺は昔に大量殺人をしたらしくてな」
「記憶にないの?だったら…誰かと間違えられてるんじゃない?」
「やっぱりそうだよなー」
…………………。
凄い仲良くなってるんだけど!
クレスとか呼んじゃってるし!
僕も結局名前呼ばれてるし!
でも、本当にクレスは狂血鬼なのか、とても疑問である。
話を聞いていると、とてもそんな悪い人には思えない。
よっぽど永久乃童子のほうがよく分からなかった。
「シズムー?どうすんの?」
「は?なにが?」
「ここ。俺は大丈夫なんだけどさ。ここから出るのか?」
「いや、全然出れそうになくて困ってる。ところでさっき、他の人たちはすぐ死んだって言ってたけど…」
「あー…アレな?うん、ここは毎日夜になると真空になる」
「は!?」
ダメだ。僕は死ぬ!
「い、今って何時だっけ!?」
「いやぁ、それは分からんが…もうすぐ日が落ちるな」
やばい。
空気が無いなんて絶対死ぬ!
「え…クレスはどうしてるの!?」
「俺は呼吸しなくても大丈夫」