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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 18

全ての悪が溢れ出てしまい、その濁流に僕は飲み込まれる。
なので使いたくはないのだけども、この際仕方ない。
「いくよ、朝霧静夢さん。このモードはちょっと厄介だぜ?」
先程まで震えていた獣たちが一斉にその震えを止まらせた。
もはや感情もなし。
狂気のみがその身体を動かす、まるで機械のような殺戮兵器に変わり果てた。
「■■■■■■■―!!!!!!」
多種多様の獣たちがそれぞれに咆哮する。
ビリビリと大地も揺るがす叫びの中、最初の獣が飛び出す。
ドラゴンー神獣の中でもトップクラスの神秘性を持つ。
その大きな翼を羽ばたかせながら、巨体をいとも簡単に風に乗らせる。
圧倒的なまでの威圧感。
見るものを震え上がらせるその神秘が、朝霧静夢へと突進していく。
見えた。
僕は一秒後の未来に、朝霧静夢の死を見た。
ドラゴンの牙に、ぐちゃぐちゃに、全身を潰されて、朝霧静夢は死ぬ。




咆哮のうち、巨体が飛び出してくる。
ドラゴンと呼ばれるその獣は、物凄いスピードで僕を殺しにきている。
その瞬間、永久乃童子の笑みが見えた。
そう、彼は一秒後の僕の死を見たのだろう。
接続は良好。
魔力も潤滑に魔法へと昇華できる。
そう、僕に大切だったことは、逃げることではない。
強くありたいと思うこと。
一瞬で魔力は魔法へと変わる。
足を治したのも、ティンクと美空ねぇの魂を元に戻したのも、ただ次の瞬きの後、そうじゃなければいいなと思っただけ。

だから今回も、僕はただ世界に懇願する。

『未来を変えて欲しい』

と。
願いは現実となる。
風景が変わる。
僕に向かって飛翔するドラゴンは、カメラのフラッシュかのように光って消えた。
同じように他の全ての獣達も続けて、光っては消え、光っては消える。
まるで花火のように、26000ほどの獣達が様々な色に光り、名残惜しそうに消える。
「なんだよ…今の…」
永久乃童子の息を飲む音が聞こえる。
それはそうだ。彼の獣は全て光り消えた。
残るのは彼と、空っぽになってしまったパンドラボックスだけ。
世界と繋がった僕に、変えられない未来はない。


「なん…なのよ…」
正直、私の頭は現実についていけなかった。
ドラゴンなんて魔獣、本でしか見たことない。
しかも、そいつに狙われてる私と静夢。
なんかコイツは意味不明な自信があるようだけど、私は確実に死んだな、と諦めの境地に入っていた。
私の紫電じゃドラゴン相手に歯が立たない(それでも全力でやれば一瞬だけ気絶させられる自信はある)だろうし、こんなの美空の蒼炎だってドラゴンの吐く猛火に負けるだろう。
だから、もう無理だと思った。
無理だと思ったんだけど……
それからはよく覚えていない。
覚えていない、というよりよく分からなかった。
ただただ…綺麗だった。
眼前に広がるのは光の連続。
私の紫電も霞むくらい。
新しい生命の誕生の光なのか、はたまた星の爆発の煌めきなのか。
私の目がおかしくなったのかと思うくらい。
それは美しく煌めいていた。
これを神秘と言わずして、何が神秘なのだろうか。

そうかー
魔法ってこんなにも綺麗なものだったのか。

永久乃童子はそのあと、パンドラボックスと一緒に姿を消した。
なぜなら静夢が獣達を消した後すぐに倒れてしまったからだ。
その静夢を介抱してるうちにいなくなっていたのだ。
でもそれは良かったと思う。
ダブルマイスターの驚異は去った。
どうやら静夢も気を失ってるだけらしい。
こっちは一応、結果的に3人とも無事なのだ。
ようやく、この長い長い夜に決着はついたのである。
聞きたいことはたくさんあるのだけども、今だけはこの寝顔に言ってあげたい。
よく、頑張ったわね。
夜は静まっていく。
まるで何事もなかったかのように。
でも私は、今日見た魔法の煌めきは一生忘れないだろう。



Chat Time 
「report」

「む…?これは……」
「ゴッド…」
「大丈夫だ。気づいておる。そうか…封印が解かれたか…」
「報告によると玩具箱と交戦中に、だそうです。どうやらその場には蒼炎の青空美空、紫電の葉桜雅もいたそうです」
「ブルーアンドクリムゾンとヴァルキュリアの娘がか。面白い組み合わせだな。そうか…ならもう偽りの居場所不確定ダブルマイスターではなくなったか」
「はい。いかがなさいましょう?」
「そうかそうか…あのガキがなぁ。では消失迷子はダブルマイスターから消してくれ」
「はい」
「そして新しく…孤独迷子(ワールドイズマイン)として追加だ。居場所はまだ不確定にしておけ」
「そのように。では私はこれで」



episode 12
「usual -ニチジョウ-」


気がついたら、僕はベッドの上にいた。

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