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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 16



ガキンッ!!
古く赤錆びているスイッチが十何年ぶりに動く。
今まで塞ぎ止めていたものが全身へと駆け巡る。
僕は忘れていたのだ。
あまりに遠い昔のこと。
それこそ孤児院に入る前のことだった。
僕は魔法使いだった。
その魔力量から妬まれ、疎まれ、虐げられ、その魔法から「新しい」と言われた魔法使いだった。


「雅」
「なによっ!?」
「ありがとう」
「はぁ?」
「僕はまた逃げるところだった」
はぁ?と私はまた首をかしげた。
そんな呑気な事を言ってる場合ではないのだ。
いいからアンタだけでも早く逃げて、と言おうとした瞬間に、また私は首をかしげた。
あれ?こいつ、なんで立ってるんだっけ?
確かどでかいライオンに足をかじられて、自分では満足に立つどころか歩けないのに。
その様子にピーターパンドラボックス・永久乃童子も気づいたのか、まるで奇妙なものを見るかのように目を細めた。
「アンタ、なんで立って…?」
「ん?治った」
「いや、治ったって…」
「治癒術かな?朝霧さん、ついに魔法を使えるようになったんだね?」
「うん、僕はもう逃げれないらしいからね?運命を変えないように施されていた封印は外させてもらったよ」

無理矢理ね、と付け加える静夢。
「でもそのせいか頭はガンガンとさっきから五月蝿いんだ。まるでハンマーで何度も殴られてるみたいだ。

だから―早く終わらせようか」


episode 10
「world is mine   -シズムノマホウ-」


永久乃童子はある村で生まれた。
その村はどこにでもあるような村だった。
その中でも大きめな洋館で彼は育った。
父も母も魔法使いだった。
といっても、ダブルマイスターとかではなく、ただ普通の魔法使いだった。
ただ、普通の魔法使い過ぎたのか、父と母はせめて息子には強い魔法使いになって欲しいと願ったのだが、生まれてきた息子は特に普通の赤子だった。

両親は嘆いた。自分達が普通であるばかりに、息子にも普通であることの苦しみを味わせてしまうのが許せなかった。
そして既に狂気となった両親は、ある魔法美術館に侵入した。
鳴り響く警報と銃声に、侵入者は怯むことなく目的の物に辿り着く。
それは―パンドラボックス。
絶対に開けてはいけない箱である。
侵入者はあまりに普通の魔法使いだったため、パンドラボックスを手に入れるところまでで完全に警備に包囲された。
しかし、普通の魔法使いは最後の魔法と言われんばかりに魔力を発した。
その瞬間、警備のアンチマジックマテリアルライフルが侵入者に炸裂する。
二人はその威力に吹っ飛ばされ、ほぼ即死だったという。
しかし、そこにはパンドラボックスがなかった。
侵入者が最後に唱えた魔法は、物の転移だったのだ。
魔力調査により、パンドラボックスはすぐに見つかった。
それは侵入者二人の家の子供部屋だった。
二人には最近、生まれたての子供がいるのは調査の段階で分かっていたことだった。
すぐに侵入者の家に警察が向かい、二人の家の子供部屋へと足を踏み入れた。
そこには、絶対に開けてはいけない箱が開けられていたのだ。
そして、侵入者の息子、永久乃童子が生まれて一ヶ月にも関わらず、箱を持ち、立っていたという。
彼の一番の魔法は、両親の姿をした人間ではないなにかだった。
警察はそのなにかに惨殺されたという。
こうして普通の赤子は異常な赤子として育つことになる。
身体だけが大きくなり、中身は子供のまま。
いつまでたってもピーターパン。
パンドラボックスは開けてはならなかったのだ。
こうして普通の両親の普通ではない子であれという願いは叶った。




早く終わらせようか、と朝霧静夢は言った。

その言葉にイラつきを感じる。
なにその上目線。この場の支配は完全に僕にある。
「へぇ…あは、で?なにができるのさ?」
「とりあえず美空ねぇを返してもらおうかな」
と、気付いたら蒼空美空は、眠るように安らかな顔をしながら、朝霧静夢に抱きかかえられていた。
そして僕のティンクは胸が空き、捨てられたぬいぐるみのように僕の足元にあった。
「ティンク!」
呼び掛けても反応しない。
まるで魂を抜かれたかのように、ピクリとも。
「無駄だよ」
「あ?」
「もうそれは、ただのぬいぐるみだ」

ただの、ぬいぐるみ、だと?

「ボックスっ!!」
殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!
僕のティンクを!よくも!
パンドラボックスから僕ができる全ての魔法を出した。

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