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GENIUS・PLUS
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GENIUS・PLUS 19

どの人形もおかえりと微笑んでいて、自分達の主人を歓迎するかのように立っていた。
偽乱造も自分の子供のような作品に歓迎され、復帰後すぐ新しい作品に取りかかったそうだ。
そして、復帰後の新作の御披露目会。
多くのファンが会場に足を運んだそうだ。
どのファンも復帰後の新作を楽しみにしており、和やかな空気の中行われた。
その注目の新作が発表された瞬間、会場の空気は違うものになっていた。

新作のタイトルは『誕生』

新作の人形は裸の女性と小さな赤ん坊の人形だった。
母親と思われる女性は分娩台に座っていて、股を開いており、女性器が露わになっていた。
その表情は安らかに微笑んでおり、まるで我が子の誕生を優しく見守っていた。

赤ん坊は、
母親のお腹を内側から破り、
上半身だけ外に出て、
薄ら笑いをしていた。

そのあまりにもグロテクスな人形に、悲鳴をあげるものもいた。
「実はまだ…完成してないのです」
と偽乱造は言った。
その手にバケツ。
中には赤い液体が入っていた。
そのバケツを勢いよく振ると、赤い液体が人形に掛けられた。
「これで完成です」
人形は真っ赤に染まり、気持ち悪さが増した。
その場で嘔吐してしまう人もいて、会場は一つの人形で異常となった。
偽乱造は不思議に思ったそうだ。
「私はいつも通り、美しい作品を作っただけだ。なのに何故拒否される。生命の誕生とは美しいものだろう」
会場の司会者は嗚咽混じりにこう聞いたそうだ。
「なら…何故、赤ん坊は女性器から生まれてこないのですか?」
偽乱造はこう答えた。
いわば、この瞬間が彼にとって『異常天才』になった瞬間とも言えよう。


「あぁ…そういえばそうだったな。気が付かなかった。だがまぁこれはこれでいいだろう。なにせ、これを作るために1人の女性と赤ん坊を殺したんだ。今更後戻りはできん。むしろ最高綺麗だ。いや、これ以上の作品が作れる気がしない。……と考えると最悪に綺麗とでも言うべきか」


その後、偽乱造は姿を消し、誰の記憶からも無くなっていった。




「おっと…生神のほうはもう『天才』じゃないのだったな。失敬。新しい『天才』にしてやろうか」
「結構です……」
「……ひでぇ…」
ポツリと呟いたのは遅れてきた色筆くんと、全身ボロボロの鞍馬くんだった。
「全員集合か…いやいや、ここも賑やかになったもんだな…」
やれやれとため息を漏らす偽乱造。
「……死神ちゃん、君とあの重力の子は逃げるんだ。ここからは俺とツバキに任せてくれ」
「……そうだよね、私はもう…」
「うん………あと、長い間待たせてごめん。今回ばかりは必ず帰るよ」
あぁ……こんなに嬉しい言葉はない。

「待ってるから…必ず」
「うん、待ってて」

鞍馬くんと私は逃げるようにその部屋から出て行く。

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