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GENIUS・PLUS
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GENIUS・PLUS 18

もはや叢雲悪夢は見境無しに人を殺し始めた。
「椿貴色筆が死ね」
「あいつはそれくらいじゃ死ねないよ」
「邪魔するなよ!」
「お前は人に邪魔されるのが大嫌いだろ?それが『最悪』だ」
「うるさいなっ!」
罵声が既に力無く聞こえた。
無色くんが叢雲悪夢を圧倒しているのだった。
『対等』にも関わらず、ここまで差がついてしまう理由を昔に話してくれた。
基本、『天才』というのはある1つの才能が突出していることを意味する。
よって、『○○の天才』は○○に関してのスペシャリストである。
だが、無色くんは『対等』であるがゆえに、どのスペシャリストとも肩を並べることができる。
才気無色はマルチスペシャリストであり、ただのスペシャリストが彼に勝つ方法は無に等しいのだ。
「卑怯だ!『最悪』だ!」
「これが力の差だ。お前とはくぐってきた修羅場の数が違う」
既に勝敗は決した。
もはや自分の全てを出しても勝てない相手に、叢雲悪夢は膝をついた。

「愉快」

と太く、低い声が聞こえた。
大袈裟に拍手をしながら、男が闇の中からゆっくりと歩いてきた。

「愉快だ。実に愉快なショーだった。ナイトメア君以上の『最悪』がいるとは、私もまだ無知だな。いやはや恥ずかしい」
ふぅ、とため息を漏らした男はじろりと叢雲悪夢を見た。
「あ………」
叢雲悪夢は目も逸らし、俯いた。
「ナイトメア君、残念だ。実に残念なショーだった。君から『最悪』を取ったら何も残らんぞ?」
「…はい…すみません…」
「ふむ…なら自分の役割を演じて欲しいものだな。君は私の最高傑作なのだから」
その言葉に違和感を覚えた。
まるで人を物のように扱う人だった。
「まぁいい…しかし本物が現れるとは想定外だった。ようこそ『天園』へ。歓迎しよう、才気無色。生神死神。ここは『天才』にとっての楽園なのだよ」
「あんたが…偽乱造…か?」

「いかにも。私が偽乱造(イツワリランゾウ)。『創造の天才』だよ。さて…ここで質問しよう。美しく壊されるのと汚されて創られるの……どちらがいい?」



10年前、偽乱造は名前を変え、今と違いそれなりに有名だった。
職業は、人形師。
彼の創る人形は人間そのものに非常にリアルで、無機物とは言えない存在感があった。
その人形は奇跡と言われ、高価で取引されたそうだ。
しかしある日、交通事故に遭った。
偽乱造は頭を強く打ち、意識不明の状態で病院に運ばれ、手術となった。
手術自体は成功したのだが、意識が戻らず、病院のベッドでそれこそ人形のように寝ていたそうだ。
交通事故においては犯人は不明で、ひき逃げという形で処理された。
偽乱造が目覚めたのは彼が交通事故に遭った3ヶ月後だった。
目覚めた時には体はもう完治しており、すぐ退院となった。
自分の家に帰り、出迎えてくれたのは彼が作った人形達だった。

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