迷宮の 9
しばらく歩いて、四人はたくさんあるドアの一つの前で立ち止まる。アサミたちもそうだが、基本的にドアの外から部屋の種類を判断することはできないので、部屋を選ぶ基準はだいたいが勘である。
「ここ、どうっスかね?」
ナツミがカヒマに尋ねた。最初からコクリやドウブに聞く気はない。
「まあ…大丈夫だとおもうよ」
「カヒマさんがそう言うなら」
ナツミがゆっくりとドアを開けた。
部屋は、壁も天井も真っ白の整然とした空間だった。装飾もなく、さっきの部屋のような松明などもない。
ただ、唯一部屋の真ん中に、物が落ちていた。黒く光る金属製の物。
ピストルだ。
「ピストルが…4丁?なんやろ、これ?」
ナツミが真っ先にそれに走りより、拾い上げた。
「ピストルは、武器だ。何かを倒すために使う」
「4丁ということは、入ってきた人間の数に対応してんだな。でも、倒すべき敵が見当たらない。この部屋には俺らしかいないし」
カヒマもそう言いながら、ピストルをとる。
「ニセモノ…」
コクリが言った。
それをドウブが続ける。言いながら、二人もピストルを手にとった。
「この四人の中に、偽物が混じっている。それを見つけだす。それがこの部屋の“課題”だろう」
ピストルを持った4人は、お互いの顔を一瞬、見合わせた。
「こンなかのだれかが、ニセモノやっちゅうわけやな?」
「恐らく一人だ。でなければ一人でこの部屋に入ったときに矛盾が生じる」
そのとき、カヒマが、ゆっくりと拳銃をある人物にむけた。
「……一人。それなら、君だろ?」
拳銃をむけられた人物はゆっくりとカヒマのほうをむいた。その眼と視線を合わせながら、カヒマが言う。
「……コクリ」
カヒマは、撃鉄を起こしながら先を続ける。
「俺はコクリの声なんか聞いたことがないよ。本物は、しゃべらない」
そして、カヒマは引き金を弾く。
だが、彼の推理ははずれていた。その証拠に、彼が発砲するより早く、後ろから彼を襲った銃弾があった。
撃ったのは、ドウブだ。
「な……!? ドウブ……!? 」
驚いた表情とともに、カヒマは倒れる。
突然ドウブがカヒマを撃ったことに反応して、ナツミも銃をあげた。
そして、言った。
「ニセモノは、カヒマさんやったんか……」