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迷宮の
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迷宮の 8

しかし、この男は欲ではなく独特の収集癖で、数多くの物を発見しては収集していた。
ペットボトルの中には水が入っている…正確には以前、泳がされたプールの水だ。
どうして、プールを泳ぐ羽目になったのかは決まっている。
石を得る過程に必要だったのだ。
ナツミは羽織っていた上着の袖に、ペットボトルの中の水を上着に零すと、上着ごと松明の火にの中に腕を突っ込んだ。
(衣服越しと言えなくも無いと思うけど果たしてどうやろ…駄目でも服が乾くだけやからええけど)
比熱の大きい水が炎の熱を奪って水蒸気となっていく。
 
【レベル三】
 
ドウブは門を突破して内側に出、一足先に着いていたナツミとコクリを見付けた。二人共、服の汚れから髪の長さまでリセット状態である。
 
「ナツミ、紫二個分の抜け道は簡単に見つかったか?」
 
言い忘れていたが、紫の“石”はナツミがしていた様な拡大解釈の範囲を広げる効果があり、他は課題自体の難易度を下げる効果がある。
 
「それはもう簡単に」
「ほう」
「水があって助かりました。ドウブさんみたいに、抜け道に気付いてても敢えて正面からあたるとか無理なんで」
「そうか…カヒマはまだか?」
「どうやら」
 
【カヒマ】
 
「フウウウヒュ、ヒュ…お?…そろそろか?」
 
挑戦開始から延々マラソン的呼吸法で走り続けていたカヒマが、漸く立ち止まった。
息をきらしながら松明に手をのばし、とめた。
 
―ゼエ、ゼエ、ゼエ……ンゼエ、ゼエ
 
 
…普通にこの課題に挑戦すると、三つの障害と戦わなければならなくなる。
・初めは、痛みに対する恐怖と、自分で自分を傷つける事に対する本能的嫌悪感、つまりどちらかといえば無意識的自分との戦い。
・その次は、反射、つまり肉体としての自分との戦い。
・最後は苦痛、いや苦痛から逃れようとする、どちらかといえば意識的自分との戦い。
 
カヒマはこの最初の部分で躓いた訳である。
 
「もう少し…走るか…いや」
 
深呼吸。
 
「あまり待たせる訳にはいかないか」
 
もう一度大きく息を吸う。まだ吐かない。カヒマはそのまま炎を睨み付け……掛け声と共に炎を殴った。
 
「ぅぁあああああああああああああああああああああああ……!!」
 
カヒマは全力で叫ぶ事に集中している。これは気を散らす作戦であって、さっき大きく息を吸ったのもその為だ。
 
【レベル三】
 
そしてカヒマは十秒後、一瞬の意識の飛散の後に門の内側に出た。
見れば他の三人がこちらを見ている。
 
「やっぱり俺が最後か…」
「たまには遅れるのもいい経験だろう、それより……」
「四人揃った今となっては、休む部屋を探すんが先決?」
「だな」
 
ナツミに台詞をとられたドウブだが、こんな事は珍しくないらしい。怒る訳でも落胆する訳でもなく、またかという顔をして歩きだした。

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